SAP仮想化を推進
NTTデータは、サーバー仮想化をテコにSAPなどのERP(統合基幹業務システム)ビジネスを活性化させている。世界同時不況でERPの大口需要先である製造業のIT投資が著しく鈍っており、ERPそのものを売り込む従来型のアプローチだけではビジネス拡大に限界がある。そこで打ち出したのが仮想化によるERPの“延命策”だ。ハード更新のタイミングで仮想化によるサーバー統合を実現し、運用コストを大幅に削減することで顧客の投資意欲を引き出す。

NTTデータが着目したのは、仮想化とハードウェアの寿命の2点。サーバーやストレージは物理的な耐用年数が限られる。しかし、ただ新しい製品に交換するだけでは運用コストは下がりにくい。ハード更新のタイミングで仮想化の提案をすれば、複数台のサーバーが統合でき、運用コストは下がる。実際、仮想化とハード更新をセットにして提案したところ、景気悪化後も「ユーザー企業から強い引き合いを得られた」(吉崎正英・製造ビジネス事業本部ソリューションサービス部第二統括部長)という。現在は1000万円規模以上の大型案件が10件、中小を合わせれば20~30のSAPを含む仮想化に関する案件が進行中である。ハードは一般的に4~5年の耐用年数で、「どうせ交換するなら、仮想化とセットで」(同)と考える顧客が増えている。SAP仮想化のビジネスでは11年度までの累計で約50億円の売り上げ増を見込む。
SAPは製品特性上、主要モジュールごとにサーバーを分けたり、カスタマイズするなど、アプリケーションの開発や試験、本番それぞれの環境を構築することが推奨される。こうした事情から「サーバーの台数が増えやすい傾向がある」(齋藤洋・基盤システム事業本部仮想化ビジネスプロジェクトプロジェクトマネージャー)。さらに、比較的大規模なユーザー層が主体で、システムも複雑になりがち。仮想化するには、高度なSI技術やキャパシティの設計能力が求められるなどハードルが高い。NTTデータにとってみれば、これまで蓄積してきたSAPの構築ノウハウや、仮想化ソフトのVMwareの知識を駆使することで、ライバル他社と差別化を図りやすい領域でもある。
NTTデータの直近の国内SAP関連ビジネスは年間で約100億円。国内約200社のユーザー企業を抱える。VMwareが対応していないUNIX系のシステムで稼働しているケースも多く、仮想化によるコスト削減策によるPCサーバーへのダウンサイジング需要の取り込みも狙う。今年1月にはSAPビジネスに強いJSOL(旧日本総研ソリューションズ)と資本提携、SAPの販売体制を強化した。ERPが売れにくい状況のなかでも、仮想化をテコにコスト削減を打ち出すことで既存顧客の深掘りや新規開拓でビジネスを伸ばす。(安藤章司)