セブン&アイグループが流通業の新業態創造に乗り出した。セブン&アイ・ホールディングス(村田紀敏社長)とNEC(矢野薫社長)は、「流通とITの共創」をテーマに協業。3月24日、合弁会社として「セブンインターネットラボ」を設立する。ユーザー企業の立場から、次世代に向けた新技術の研究や自社に最適なシステムの開発を進めていく方針だ。
流通業の新業態を創造

セブンインターネットラボは、セブン&アイグループがもつ小売業のノウハウと、NECが得意とするシステム開発のノウハウを集結して設立された。インターネット技術の活用を追求し、小売業とITが協働できるビジネスモデルを構築する。小売業の新しい可能性を見出すことを目的とし、IT人材を確保してITへの投資対効果を高めるためにシステム開発を進めていく。セブン&アイグループにとっては、ビジネスモデルの変革が狙い。NECにとっては、流通向けの新製品開発に生かすことが目的となる。
両社が手を結んだ背景には、NECが1978年に「ターミナルセブン」を開発したという経緯がある。「ターミナルセブン」とは本社と取引先、コンビニエンスストア「セブン-イレブン」の加盟店をコンピュータネットワークで結び、発注作業をオンラインで行えるシステム。当時、画期的なシステムとたたえられた。そこで、改めて協業することになったわけだ。
セブンインターネットラボの社長に就任するのは、セブンアンドワイ社長である鈴木康弘氏。富士通でシステムエンジニアを務め、ソフトバンクでパソコンソフトの卸営業に携わったキャリアの持ち主だ。セブン&アイグループに入社する以前は、ネットショップの「イー・ショッピング・ブック」を設立している。そうした経歴から、「ITベンダーとITシステムを導入するユーザー企業の両方が意図していることが理解できる」という。富士通で小売業向けシステム開発を手がけた際は、ユーザー企業のニーズに応えながらもITベンダーとしての立場から利益を確保できるシステムを提供しなければならない。
一方、ネットショップを運営していた際は、ユーザー企業の立場として使いやすくコストを抑えたシステムを導入したいと考えていた。また、「ヤフーやグーグルをはじめ、ウェブサービスプロバイダ大手は、自前でシステム開発を行っている。これにより、自社に最適なシステムを導入している」と指摘。ユーザー企業側でシステム開発を手がける企業を設立する必要性があると判断したというわけだ。しかも、今回の協業はITベンダー側のNECにとって、セブンインターネットラボと共同開発した製品やシステムなどを外販できるという利点がある。
こうした異なる業界ベンダー同士が組むのは、ITシステムがユーザー企業にとって最適なものかどうかをITベンダーが改めて考えなければならない時期が到来したことを物語っている。また、事例にみるように、ユーザー企業とITベンダー双方のメリットにつながるパートナーシップが必要となる。(佐相彰彦)