セキュリティ関連ベンダーの英メッセージラボの日本法人、メッセージラボジャパン(山本誠治代表取締役)は、国内中小企業の開拓を本格化する。メッセージラボは昨年シマンテックに買収され、米国ではシマンテックのSaaS事業ユニットとしてバックアップサービスを提供している部隊を統合した。日本では、当面別組織としてサービス提供を続ける方向だ。別組織ではあるが、営業面などで相乗効果が出てきているという。
シマンテックと相乗効果

メッセージラボは、グローバルで12都市・16か所のDC(データセンター)に4000台以上のサーバーを設置し、マネージドサービスを提供している。国内では、主にメールセキュリティのSaaSを提供してきたが、このほど国内に2か所のDCを開設し、ウェブセキュリティサービスの提供を開始した。
このサービスは、商用エンジンと独自開発の人工知能「SKEPTIC」などを組み合わせた5層の複合スキャンによる高精度の検知率と、サーバーの分散配置によるサービスインフラの稼働率100%、ネットワーク遅延時間平均60秒以内をSLA(サービスレベルアグリーメント)で保証しているのが特徴だ。11か国語対応なので、海外拠点やグループ企業でも利用できる。またTCO(総保有コスト)削減に貢献し、資産の陳腐化リスクがないのも、SaaSならではの強みだ。
同社の顧客は、グローバルでは2万社・800万人を超え、1社当たりのユーザーは400人程度だ。一方、国内では230社・25万人で、1社1000人規模の大企業が多いという傾向がある。同社のサービスは、利用ユーザーが増えるほど1人当たりの月額利用料が安くなる仕組みとなっている。利益確保の面からも中小企業開拓は課題だったが、SaaSなら中小企業に向けて価格や管理などのコストメリットを訴求できる。
これまでは、管理用ポータルが英語対応であること、国内に十分なサポート体制を敷くことができなかったことから、中小企業への積極的展開は行ってこなかった。だが、ここにきて「シマンテックとの相乗効果が出始めている」(メッセージラボジャパンの山本誠治代表取締役)という。シマンテックのローカリゼーション部隊の手で管理用ポータルの日本語化が可能になり、「今秋以降は現在の倍の陣容で臨む。中小企業開拓の専門部隊、マーケティング担当者を採用するほか、日本語のヘルプデスクなどを充実させる予定」(山本代表取締役)と、中小企業への拡販を本格化する。日本IBM、ベライゾン、日立情報システムズら主要パートナーのほか、中小企業にアプローチできるパートナーも拡充する計画だ。
国内市場で先んじてSaaSを提供してきた競合他社は、一から体制を作ったことで販売に苦労している状況もあるという。「当社はシマンテックのエンタープライズセールスと協力した営業活動体制を築いている」(山本代表取締役)。シマンテックはアプライアンスを保有しているが、「SaaSとアプライアンスは競合するものではない。どちらを導入するかは顧客の運用方針による」(同氏)と、顧客の選択肢を実績のあるSaaSにも広げた格好だ。(鍋島蓉子)