日本市場で独自の進化を遂げた技術やサービスのうち、世界で存在感を示せないモノが多いことを「ガラパゴス進化現象」という。国際競争力がなく、日本の特殊市場でしか適応できない悲観的な言葉。この現象に疑問を呈し、「超ガラパゴス戦略 日本が世界で勝つ価値創出の仕掛け」を上梓した日立コンサルティングの芦辺洋司・取締役の持論を紹介する。
「ガラパゴス進化」こそ日本の強みだ!
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| Profile:大学卒業後、イーストマンコダック社入社。その後、米国で大学院に進み、MBA取得。1992年、KPMG Peat Marwick監査法人入社。監査・税務業務・経営コンサルティングに従事。1997年、同社日本事務所開設につき帰国。大手ハンバーガーチェーン経営戦略本部長を経て、現職。 |
「ガラパゴス進化」の論調はこうだ。「国際競争力がなく、日本の特殊な市場でしか適応できない」。しかし、「それは違う」と反発を覚えた。本書で紹介したシャープの薄型テレビ「AQUOS(アクオス)」やキヤノンの事例を見た時、特殊な製造プロセスや技術を持ち「国内に残すモノ」と「海外に出すモノ」をうまく選別していると感じた。強みを選別し、模倣されない仕掛けを考え、世界に出ることが重要だ。
海外のスタンダードがすべて正しく、それに適応させることが「グローバル進化」と根拠なく信じている傾向が強い。こうしたマインドは、日本産業や経済にマイナス。真の日本の強みを再発見し、それを最大限発揮させるべきである。そこで、「捨てるモノ」と「残すモノ」を論理的に検証し、戦略立案に役立てる「戦略フレームワーク」を作成した。「ガラパゴス進化」は差別化要因。これを「強み」として価値を提供できる。
私は「超ガラパゴス戦略」という「戦略フレームワーク」を提唱している。まず、商品、規格、様式、行動、文化、ノウハウが「日本発祥か」「海外発祥か」で区分した。さらに、「国内市場だけにヒット」しているか、「海外も含め売れている」かで、四つの市場セグメントに分けた(図参照)。国内で閉じているのをA「引きこもり」。日本で生まれて海外でヒットしているのはB「パンデミック・ウイルス」。Bでは、任天堂の「Wii」が典型的な例となる。さらに、海外で生まれて標準化したものをC「海外発グローバル・スタンダード」。海外発祥で日本でヒットしているのがD「開国・洋モノ」とした。
この4セグメントには移動力学がある。それが次の五つのベクトルだ。(1)引きこもりから海外に出る「国際競争力強化ベクトル」と(2)国内で成功したものの海外に模倣され、市場のガバナンスを取られる「海外流出化ベクトル」。後者は太陽電池などが当てはまる。このほか、(3)海外で考案され日本市場に入ってくる「黒船来航ベクトル」、(4)海外発祥で日本に定着し独自に進化させた「機能・価値発見ベクトル」、(5)「パラサイトベクトル」は国内、海外の双方向のベクトルで成り立つ。
ポイントは、(1)を実現にするには何が必要で、(2)をどう防ぐかということ。(1)の実現には四つのシナリオがある。一つはデファクト(事実上の業界標準)、デジュール(国際規格)として競争力を強化する「グローバル規格戦略」。二つ目は造語で「アイソ(同質)マーケット戦略」と言い、市場自体を日本と同質化する考え方。アニメやマンガはその一例だ。さらに「市場創造戦略」で新しい価値や追随できないビジネスモデルをつくったり、「競争優位戦略」でブランド力や付加価値を高める。これらで国際競争力強化を図ることを提唱している。
(2)を防ぐには、「AQUOS」のように製造工程を「ブラックボックス化」して模倣できないようにしたり、「インテグレーション」でサービスとほかの付加価値を統合する手法がある。

SI業界について言及すれば、伸ばすべき「強み」を取捨選択をする時期にある。SI業界は、外貨獲得額が少ない。ビジネス・アプリケーションも海外に対しての「強み」とはなっていないが、国内の顧客ニーズに対して、きちんと応えられるのは国内ベンダーの持つ力だ。携帯電話などは組み込みシステムが不可欠なので、組み込み系のSIerは、海外に進出しても強いはずだ。
とはいえ、正直まだ分析しきれていない。“iモードの仕掛人”夏野剛氏と「ブロードバンド・アソシエーション」という団体で、「IT国際競争力研究会(超ガラパゴス研究会)」を今年4月に立ち上げ、IT業界を広義に捉えて、熱い議論を戦わせているところである。