リコーテクノシステムズ(リコーテクノ、川村收社長)が中堅・中小企業(SMB)市場でITサービス事業を伸ばしている。従業員100人以下を主なターゲットに置いたインターネット環境の構築・運用サービス「NETBegin BBパック Select」は、2009年度(2010年3月期)上期は前年度下期に比べて2倍、前年度上期比では4倍と大躍進。同サービスの利用企業数は累計4万5000社を超え、猛スピードで増えている。ヒットの裏には、保守サービス会社がもつサービスインフラの有効活用と、今年度から始めた「コーディネータ」と呼ぶ新営業支援部隊の存在がある。
リコーテクノは、リコーグループでプリンタや複写機、MFP(デジタル複合機)のメンテナンスサービスを担当する保守サービス会社だが、5年ほど前から、親会社リコーの方針でITサービスを強化し始めていた。
今年度に入って絶好調の「NETBegin BBパック Select」の販売実績は、毎月3000セット以上で、9月には過去最多の月間5000セットを記録。合計ユーザー数は4万5000社を超えた。サービス内容は、インターネット環境の構築と、障害が生じた際の保守サポート。プロバイダとインターネット回線の契約作業を代行し、ルータを設置・設定してLANを構築する。ネットワークにトラブルが発生した場合は、エンジニアが顧客先に駆けつけて解決する。「中小企業やSOHO、大手企業がもつ小規模拠点などから多くの引き合いをもらっている」(岡島秀典・取締役専務執行役員ITサービスセクター長)。
目新しい事業ではないが、全国規模でサービスを提供しようとすると難しい。「障害発生時にすぐ駆けつける」を謳うためには、全国網のサービス拠点と人員が必要だからだ。リコーテクノは、約400か所のサービス拠点と約4000人のカスタマエンジニア(CE)を複写機やMFPの保守サービス提供のために設けており、このサービス体制をITサービスの提供にも活用することで実現した。
もう一つのポイントが、今年度から設置した新営業部隊の存在だ。「コーディネータ」と呼ぶ専門スタッフで、簡単にいえば「技術が分かる営業担当者」。営業担当者は、提案はできるものの技術に詳しくない。一方、CEは技術に明るいものの、提案ができない。リコーテクノは、両職種のスキルを併せ持つ人員の必要性を感じて約5年前に計画し、着実に育成してきた。現時点で1000人が育っている。このコーディネータを、CEや営業と同じように全国の拠点に配置し、提案や保守業務の現場に同行させることで案件獲得に成功したわけだ。「NETBegin BBパック Select」のヒットには、このコーディネータの存在が欠かせなかった。コーディネータは、ユーザー企業の従業員数に応じて3区分し、それぞれが身につけるスキルと提案するソリューションを分け、顧客層に適したスタッフとソリューションを用意している(図参照)。
誰にもできそうでできないサービスを、保守サービス会社ゆえに整備してきた拠点・人員を活用することで比較的スムーズにスタートさせた。“技術が分かる営業担当者”を配置したことが成功要因である。(木村剛士)