日本IBM(橋本孝之社長)が、ビジネスパートナーとの関係強化に力を入れている。同社は、ハードやソフトなど製品別に分かれた従来のパートナー支援策を改め、顧客企業の経営課題を解決する方策をパートナーとともに考案する手法を、ここ半年余りにわたって実践。2月中旬開催の「IBMエクセレント・パートナー・アワードJapan」では、導入事例や新規市場の開拓、先進的な取り組みの実績に基づいてビジネスパートナーを表彰した。製品別のトップセラーの表彰はこれまでにもあったが、ビジネスパートナー全体のソリューション能力を総合的に評価するのは今回が初の試みだ。
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| 古長由里子部長。手に持つのは2010年1~3月期の「IBM販促虎の巻集」。IBMパートナー以外の社外秘。最新の販促ノウハウを100ページ余りにまとめたもの。昨年同期の印刷部数は1000部程度だったが、徐々に引き合いが増加し、同最新号は6000部印刷するまで拡大している |
「IBMエクセレント・パートナー・アワードJapan」では、総合と特定の2部門26分野が表彰された。総合部門は日本ビジネスコンピューター(JBCC)や日本情報通信(NI+C)、ダイワボウ情報システム(DiS)などIBMの製品販売に欠かせない面々が並ぶ。一方、特定部門では富士通のビジネスパートナーとして有名な大興電子通信が登場。地域で活躍する丸新システムズ(新潟県)、アイビス(高知県)なども受賞を果たした(下表参照)。
日本IBMでは、昨年下期(09年7~12月期)から、従来のハード・ソフトなどの製品別に分かれたパートナー支援から、顧客の抱える経営課題の解決を優先する支援策に、順次切り替えてきた。例えば、経済危機の爪痕が色濃く残る中部地区や九州地区の製造業をターゲットとしたコスト削減策やグローバルのサプライチェーンの効率化などの方策を、パートナーとともに具体的に立案。この案に基づいたセミナーを開催したところ「IT投資の抑制色が強い福岡地区でも100人単位で顧客企業の経営層の方々を集めることができた」(古長由里子・パートナー&広域事業パートナー・ストラテジー&マーケティング部長)と話す。
他にも日本IBM社内で活用してきたIT投資のROI(投資対効果)を割り出すツールも積極的に活用している。また、日本IBM自身のビジネスモデルも、サーバー製品の再編や、クラウドなどソフト・サービスに大きく舵を切るなど、顧客ニーズに合わせて大きく変わっている。ハードやパッケージソフトの販売代理を軸とした旧来のパートナー施策では、市場の変化に適応できない。
今回のパートナー・アワードでは、経済危機後の市場の変化に適応できたパートナーが上位に名前を連ねている。見方を変えれば、ライバルメーカーに先駆けて、大きくビジネスモデルを変えようとしている日本IBMを巧みに活用しているSIerでもある。古長部長は、「昨年度下期からの施策が、実際に数字に結びつきつつある」と、今年度(2010年1~12月期)も、引き続き、顧客の課題解決に重点を置いたパートナー施策を継続する方針を示している。(安藤章司)