ジュニパーネットワークス(細井洋一社長)は、東京証券取引所(東証)の次世代ネットワークインフラ「arrownet(アローネット)」でルータが採用され、順調に運用できていることの中間報告のために記者会見を開いた。会見には、同社側から日本法人の細井社長のほか、米国本社のケビン・ジョンソンCEOも同席し、製品が東証のシステム構築に大きく寄与したことをアピールした。加えて、ワールドワイドで金融機関に多くの導入実績をもっているという強さをみせつけた。
金融機関に強いことをアピール
「arrownet」は、東証が次世代システムとして位置づけた「arrowhead(アローヘッド)」の高速ネットワーク基盤で、証券取引やオプション取引、デリバティブ取引などでユーザーが意識することなく切り替えを実現できることを前提としている。「ユニバーサル取引」を行える環境整備が目的で、同基盤のデュアル・アクセス・ポイントを経由して企業のオフィスやデータセンター(DC)への接続サービスを提供。高速で大量のデータ通信を目的に設定されており、データセンター間をつなげることで、ワールドワイドなど他取引所との接続が可能。通信事業者が提供する回線サービスを自社で構築したことになる。
東証の鈴木義伯・常務取締役は、「世界レベルのネットワーク基盤を構築できた」と自負している。これは、構築にあたってジュニパー製品としてルータの「M320」や「M120」などを採用したことが大きいようだ。
このような評価を受け、米ジュニパーのジョンソンCEOは、同社製品で「金融機関が抱える課題を解決できる」とアピールしている。その裏づけとなるのは、「ワールドワイドで5500社を超える金融系顧客を獲得している」(ジョンソンCEO)実績があること。日本法人の細井社長は、「東証のインフラ完成に向けて仲間に入れてもらったのは光栄なこと」と表明し、ユーザー企業として東証を獲得したことで「世界にアピールできる」と自信をみせている。
投資額は約20億円だったという。ネットワーク基盤の構築案件は入札で、「価格と実績を重視して(ジュニパー製品に)決めた」と、東証の鈴木常務は説明している。競合他社が存在するなかで認められたという点で、ジュニパーにとっては大きな成果だったといえよう。
東証では、「(通信事業者が提供する)従来の回線サービスを活用した場合、通信上の課題があった。高速性と信頼性、拡張性、柔軟性を揃えたネットワークを構築したかった」(鈴木常務)と「arrownet」を構築した背景を語っている。東証だけでなく、クラウド化に向けてDCの増強を図っている企業が多いことを踏まえると、今後は自社で通信回線を構築するケースが出てくるとみられる。インテグレータにとっては、DCをはじめとするネットワークインフラ構築のリプレースはビジネスチャンスの拡大につながる。
今回、ジュニパーが東証のインフラ構築に寄与したことを大々的にアピールしたのは、競合メーカーより優れていることを誇示したかったからにほかならない。また、他社製品をメインにビジネスを手がけるインテグレータとパートナーシップを図る契機にもなるといえそうだ。(佐相彰彦)

記者会見では、来日した米ジュニパーネットワークスのケビン・ジョンソンCEOが東証のネットワークインフラ構築に寄与したことをアピールした