紫金技術グループ
金融に強い中国有力SIer
「JP1」を大手地銀へ納入
金融業顧客に強い中国SIerの紫金技術グループは、日立製作所の有力ビジネスパートナーである。2009年には上海の大手地銀に日立の統合システム運用管理ソフト「JP1」を納入した。日立関連製品では、これまでATM(現金自動預金支払機)を取り扱うことが多かったという同社。だが、JP1などのソフト商材の案件を通じて、ユーザー企業のソフト・サービス需要にも積極的に応えていく方針だ。謝公輝・紫金技術グループ副総裁にご登場いただいた。
ソフト・サービス需要に応える日立製ATMのトップセーラー ──まずは日本の読者に向けて、御社のご紹介からお願いします。
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| 謝公輝・紫金技術グループ副総裁 |
謝 紫金技術グループは、もともと政府系の企業でしたが、92年に株式会社化して現在に至っています。主に金融業向けのITサービスを手がけています。グループ社員数は約820人、北京、上海、南京など主要都市70余りに拠点を展開し、グループ連結売上高はざっと10億人民元(日本円約130億円)です。
──今回は、日立製作所の中国におけるビジネスパートナーとしてご登場いただいたわけですが、日立製作所グループとの出会うきっかけは教えていただけますか。
謝 当社は2002年から日立製作所のATM(現金自動預金支払機)を取り扱っており、これまで中国国内に1万8千セットを超える納入実績があります。これだけの規模での納入実績を他社では持っておらず、日立製ATMのトップソリューションプロバイダーと自負しています。他にもIBMやCisco、HP、Juniperなど著名な企業向けIT商材ブランドを多数、マルチベンダー方式で取り扱い、顧客の経営課題を解決。こうした取り組みによって業績を伸ばしてきました。
日立製作所ソフトウェア事業部の主力商材の1つである「JP1」と直接接点を持ったのは07年。以来、製品に対する理解を深めて、顧客向けの営業活動を本格的に始めたのは08年からです。統合システム運用管理に対する顧客のニーズは強く、翌09年には大手地銀向けにJP1の納入・稼働を果たしています。
検証環境で購入を促進 ──大手地銀向けの案件は、1つの成功事例かと思いますが、成功に至った要因は何だったのでしょうか。
謝 この大手地銀の顧客は、上海に本店を持ち、JP1は同行のクレジットカード管理システムに適用されています。金融系の基幹業務システムは24時間休むことなく動き続けるタイプのものですので、運用にかかる負担が大きいのですね。JP1の本稼働後は、運用管理の工数が大幅に減り、システムの安定稼働にも役立っていると顧客から評価をいただいています。
当社としても、こうした顧客の経営課題を解決することを最も重視しており、SIerとして、日々さまざまな有用なIT商材を探しています。前述の通りJP1は07年から検証を行ってきました。ここで役だったのが、日立信息系統(上海)の森さん(軟件事業部事業部長)らが用意してくださったJP1検証環境なんです。
──具体的には、検証環境でどのようなことを行ったのですか。
謝 この検証環境に、ユーザー企業向けのデモ環境を用意。そこでJP1をつかった統合システム運用管理を体験してもらうとともに、技術的な検証も同時に行いました。こうしたアプローチによって顧客の迅速な購入決定やシステム構築、納入後の安定稼働につながったと実感しています。
当社では、今後も金融向けSIのエキスパートとして、顧客のニーズに応え、経営課題を解決していくことで事業拡大を進める方針です。
急成長する中国SIビジネス
金融系IT投資、3つのトレンド 金融業顧客向けのSIに強い紫金技術グループの謝公輝副総裁によれば、中国の金融業界は「案件規模の拡大」「システムの統合化」「高度専門化」の3つのトレンドがあるという。
金融業界は全国オンラインなどITシステムの高度化によって、本店情報システム部門での集中購買を推進。各支店で本店の要求に沿ったシステムを構築するのではなく、銀行なら、銀行全体のシステムを一括で購入する。当然、案件あたりの規模は大きくなり、これに対応できるSIerも、大きな案件に対応できるSEの数や年商規模が求められるようになってくるわけだ。
案件の規模が大きくなれば、システムを統合化し、JP1のような統合的な運用管理方式を採用し、運用の自動化ニーズが高まる。そして、大規模システムを支える技術的基盤もより高度なものが要求されるという構図である。
中国のSIerは、準大手や中堅規模が入り乱れ、これに中小も含めれば2万社による混戦状態にある。IT投資の規模が大きい金融業顧客のこの3つのトレンドは、中国情報サービス業界に与えるインパクトは大きく、また、他の産業や流通でも同じような現象が起きる可能性もある。こうした案件の大規模化、統合化、技術の高度化は、中国のSIerをより大きく育てる成長基盤としても機能する。
日本のSIerやITベンダーは、こうした中国SIerの成長に役立つ商材やソフト・サービスを積極的に提供することで、中国の市場で共に伸びるチャンスを掴めるのではないか。