ソフトウェア開発を手がけるサイバーステーション(福永泰男社長)は、Linuxディストリビュータのミラクル・リナックス(児玉崇社長)と協業。サイバーステーションが提供するデジタルサイネージ向けコンテンツ配信システム「デジサイン」のセット・トップ・ボックス(STB)の組み込みOSに、ミラクル・リナックスの「Embedded MIRACLE」を採用した。現在、デジタルサイネージへの顧客の要望が多様化しつつあることから、OSとサービスの親和性を高め、パフォーマンスやカスタマイズ性を高めることで、これまでの中堅・中小市場から、さらに上位の市場を狙う戦略だ。
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| 福永泰男社長 |
デジタルサイネージは、近年大きく広がり始め、今や駅構内、店舗などさまざまなところで見かけるようになった。サイバーステーションでは、2009年3月から、小規模導入から多拠点展開までコンテンツ配信が可能なシステムとSTBや回線など必要なものを一括で提供する「デジサイン」を、SaaS/ASPとパッケージで提供している。安価に導入できることが受けて、地方銀行を中心に医療機関などに導入が進んでいる。
顧客からは、本来の広告・販促目的だけでなく、太陽光パネルとつないで発電量やCO2削減量を見たい、また業務目的で売り上げを可視化・共有する仕組みとして利用したいという要望が出るなど、高度なアプリケーションに対するニーズが高まっている。
こうした要望に応えるためには、デジサインとSTBを連携して、プラットフォームを制御する必要がある。また、福永社長が「KIOSK端末やiPadなどのネットワーク端末が普及し、サイネージとの垣根がなくなりつつある」と話すように、多種多様な端末に対応するために、STBのOSがカスタマイズできる仕組みが不可欠だった。ところが、これまで配信サーバーにはWindowsOSを採用していたためにOSをサポートできず、SaaSとOSの親和性がなく、またパフォーマンスの低下や不安定になるなど、さまざまな問題を抱えていた。そこで「AndroidやLinuxなど、他のOSを検討した結果、ミラクル・リナックスの『Embedded MIRACLE』に行き着いた」(福永社長)という。
サイバーステーションでは、インテル製のコストパフォーマンスの高いAtomプロセッサと「Embedded MIRACLE」を搭載したSTB(アドバンテック社製)を上位モデルとして位置づけ、今夏に販売を開始するとともに、現在提供しているアイ・オー・データ機器のSTBにも、秋には「Embedded MIRACLE」の搭載を予定する。同社は、上位モデルのSTBをもって、中堅・中小市場から大規模顧客にもすそ野を広げ、デジサインの提供を加速する考えだ。
iPadやiPhoneなど、モバイル端末が多様化し、インターネットへの接続端末が増えるなか、コンテンツの重要性は高まり、情報活用の仕組みの拡大が求められている。デジタルサイネージは「デジタルサイネージ」にとらわれず、幅広い利用が期待できる。(鍋島蓉子)