その他
SaaSパートナーズ協会など 誰でも参加できる「みんなのクラウド」が始動
2010/10/21 14:53
週刊BCN 2010年10月18日vol.1354掲載
クラウド/SaaSのサービスを安価に販売できる体制づくりを推進するSaaSパートナーズ協会(松田利夫専務理事=きっとエイエスピー社長)の加盟ITベンダーなどが、技術や人材資源の「共同拠出方式」で構築するクラウド技術・事業基盤「みんなのクラウド」というモデルを検討している。中小規模のSIerやソフトウェアベンダー、ITコーディネータ(ITC)、団体など各社が保有するインフラを提供し、これらをつないで「広域分散型クラウド基盤」を構築。共同で運用する。それを使って参加各社が、簡単で安価に「クラウド・サービス」を開始できる環境をつくる。大手ITベンダーのクラウド基盤を利用するのではなく、単独で事業化する機会を生み出すのが狙いだ。
インフラ持ち寄り、基盤をつくる 「みんなのクラウド」には、協会加盟・非加盟にかかわらず、SIerやソフトベンダー、ITC、IT業界団体、非IT団体、一般企業など広く参加を募る予定。早い段階に「共同出資型」で株式会社化を図る。 参加各社は、自社にあるサーバーなどの既存インフラ資産や構築・運用技術ノウハウなどを持ち寄る。クラウド基盤技術には、アメリカ航空宇宙局(NASA)でも採用されている、クラウドインフラを標準化する「OpenStack」や「Amazon Web Service」と互換性のある「Eucalyptus」などを利用する。 まずは、参加各社の事務所やデータセンターに置かれたサーバー群をグリッドのように束ね、「広域分散型クラウド基盤」を構築し、IaaSを提供する。そのIaaS上に「Google App Engine」互換のオープンソース「AppScale」や各種開発環境などを利用してPaaSを提供。さらには、その上に参加企業・団体が持ち寄ったアプリケーションなどを搭載してSaaSによるサービス提供を行う。参加企業・団体は、誰でも、これらIaaS、PaaS、SaaSを利用し、再販することができる。 IaaS/PaaSの運用基盤は、協会加盟のITベンダーの技術などを活用。基盤には、クラウド・サービスを提供するために必要な仕入・販売・課金・ユーザー管理機能やSaaSを再販するための支援機能などを搭載する。また、参加各社がクラウド・サービスを展開するうえで必要な基盤技術ノウハウに関する教育、サポート、ヘルプデスク、インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)と協業するための支援なども行う。参加各社が自社内にクラウド構築したり、提供のノウハウを蓄積できるようにするのが目的だ。 全国にある中小規模のSIerやソフトベンダーには、クラウド・サービスへの参入障壁がある。SaaSを提供するために大手ITベンダーが貸し出す高価なデータセンターを利用するか、自社で基盤を構築するための初期投資が必要となる。ただ、こうしたベンダーには、最初から十分な収益を得ることが期待できないまま大きな投資をすることはできないというジレンマがある。仮に、大手ITベンダーやデータセンター事業者に場所を借りてクラウド・サービスをスタートしても、社内にノウハウを蓄積できない。 「みんなのクラウド」の発案者である松田専務理事は「特定ベンダーの基盤だけを利用するのでは、“ベンダー・ロックイン”に陥る恐れがある。自前のサービスだけでは集客力が足りず、顧客の要求に応えられない。他のクラウド・サービスを組み合わせて付加価値を高めたいと考えているはずだ」と話す。 国内の大半を占め、クラウドへの事業移行に悩む小規模ベンダーが「みんなで資源を持ち寄り、みんなで運用できる」(松田専務理事)安価な仕組みを「みんなの手元に」つくろうというわけだ。 参加各社から手持ちのサーバーを数台からでも提供してもらい、そのすべてにオープンソースのクラウド基盤を搭載することで、相互可換な「広域分散型クラウド」による“サーバー群”を構成し、そこにあるリソースを参加各社でシェア。これに、クラウド・サービスを提供するために必要な運用基盤を搭載して、サービスを付加して顧客にシステム提供するための技術ノウハウの伝授や蓄積に関する支援も行う。クラウド時代の到来で行き場を失いかけている中小規模のベンダーなどの生き残りを支援する仕組みといえる。【関連記事】中小ベンダーの“救済策” ビジネスモデル変革が究極の目的 中小規模のSIerやソフトウェアベンダーがクラウド・サービスを提供するうえでの課題を「ヒト・モノ・カネ」で分析すると、以下のようになる。 まずヒトでは、絶対的な人員数とクラウド技術ノウハウの不足が挙げられる。モノで見ると、従前のクライアント/サーバー型システムを提供するハードウェアやソフトウェアなどは揃っていても、クラウドを提供するための基盤がない。データセンターを保有しないベンダーには、なおのこと参入障壁が高い。カネの面も不安が多く、事業として成功するかがわからないクラウドに参入する予算はもっていない。 仮に自社開発ソフトがあって、それをSaaS化してサービス化するにしても、開発投資や提供するための基盤も借りる必要がある。富士通やNEC、日本IBM、日立製作所など大手ITベンダーでは、こうしたベンダーを救済すべく、クラウド基盤やビジネスモデルを転換させるための支援を行っている。 大手ITベンダーの「系列」と呼ばれ、1社の製品を中心に販売してきたSIerは、これに参画し、自社のクラウド事業を検討することをよしとするだろう。しかし、多くの中小規模ベンダーは、特定のベンダーに偏らず、顧客の要求に応える形で複数ベンダーの製品を組み合わせてシステムを構築しているのが実状。ベンダー・ロックイン、つまり1社に偏ることで、サービスの自由度が制約される危険性があるからだ。 「みんなのクラウド」は、単にクラウド技術ノウハウを寄せ集め、クラウド基盤を提供することだけが目的ではない。 前述の通り、中小規模のベンダーが抱える悩みは多い。こうした声に応え、現行のビジネスとクラウドを融合させた「新たなビジネスモデル」をつくるうえで、できるところから安価で早期に立ち上げられる仕組みといえる。安定した安心できる基盤ができあがれば、国内IT業界に旋風を巻き起こすことだろう。(谷畑良胤)
クラウド/SaaSのサービスを安価に販売できる体制づくりを推進するSaaSパートナーズ協会(松田利夫専務理事=きっとエイエスピー社長)の加盟ITベンダーなどが、技術や人材資源の「共同拠出方式」で構築するクラウド技術・事業基盤「みんなのクラウド」というモデルを検討している。中小規模のSIerやソフトウェアベンダー、ITコーディネータ(ITC)、団体など各社が保有するインフラを提供し、これらをつないで「広域分散型クラウド基盤」を構築。共同で運用する。それを使って参加各社が、簡単で安価に「クラウド・サービス」を開始できる環境をつくる。大手ITベンダーのクラウド基盤を利用するのではなく、単独で事業化する機会を生み出すのが狙いだ。
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