綜合警備保障(ALSOK)と業務提携する岐阜県最大の警備専門会社、日本ガード(不破欣昭社長)は、「ホームセキュリティサービス」の営業活動を効率化するため、顧客先で警備機器を疑似体験できるiPad用ツールの導入を決めた。地元の大手システムインテグレータ(SIer)であるインフォファーム(辻博文社長)がスクラッチ(手組み)で開発。スマートフォンのアプリケーション開発で実績のある同社を選んだ日本ガード側の判断基準は何だったのか、現地で取材した。
ユーザー企業:日本ガード
日本の警備会社のフロンティア。主な事業は機械警備をはじめとする常駐警備、交通誘導、現金輸送など。これら業務を総合化した「グローバルガード・システム」を得意とし、岐阜県内大手企業の多くから委託を受けている。
サービス提供会社:インフォファーム
サービス名:営業支援ツール for iPad
日本ガードの「営業支援ツール for iPad」
リアルなアプリで機材の疑似体験可
 |
| ホームセキュリティを説明するには、これだけの機材をジュラルミンケースに詰めて運ばなければならない |
日本ガードは1967年に設立。70年にはALSOKと業務提携し、岐阜県内全域へと事業エリアを拡大した。現在の案件は大半がビルなどに居を構える法人が相手。しかし、2011年から住宅に火災報知器を設置することが義務化されることを受け、「ホームセキュリティサービス」の販売を強化している。
法人相手のサービス販売と異なり、住宅向けは安価なので、数を捌く必要がある。日本ガードのサービスは主に3種類。簡易版の「あんしん3」、24時間365日の住宅の安全を守る「ホームセキュリティα」、緊急時にはガードマンが25分以内に駆けつける「ホームセキュリティ7」がある。ただ、火災報知器や監視カメラなど、住宅個々の状況に応じて販売する機器類は多種多様で、「営業時は、すべての機器をジュラルミンケースに入れて、実際に見てもらう必要があった」(日本ガードの浅野敦・営業部次長)のだ。
日本ガードでは、営業マンが住宅へ訪問する際、不審者の侵入経路となる窓の数などを把握する「警備診断」を行う。この診断結果を基に、各住宅に応じた機器の整備や警備体制などの見積書を提出する。だが、「見積書の説明や機器を持ち出して実際に見てもらうなど、何度も訪問する必要があった。『海外旅行に行くので、すぐに泥棒対策をしてほしい』など、急な要望もある」(浅野次長)のが実態。従来の方法では数をこなすにも限界があった。各戸訪問のつど、機器類を持ち出すのは難しいし、機器の数にも限りがある。そこで目をつけたのが「iPad」だ。臼田実・機械警備部EDP室室長は「iPad発売のニュースを見て、何かできるはず」と思いついたそうだ。
岐阜県は、今やiPhone/iPadアプリ開発の“聖地”といわれるほど全国から注目を集めている。IT集積地の県施設「ソフトピアジャパン」で学んだベンチャー企業が大ヒットアプリを続々と世に出している。ソフトピアジャパンに開発事務所をもつインフォファームも、スマートフォンやハンディ端末などのアプリ開発で実績がある。日本ガードの臼田室長は「だからこそ、インフォファームに頼めば、きっと何か役立つツールができる」と判断したのだ。
そのインフォファームが日本ガード向けに開発したアプリケーションが「営業支援ツール for iPad」だ。営業担当者が高価なデモ機材を運ぶ必要がなく、複数のホームセキュリティの運用や操作を簡単に体験できる。また、その場で見積りを試算して、即時メール発信で顧客に履歴を残したり、GPSや地図を利用した警備サービスの内容を説明するのに役立てることも可能となる。
10月から一部運用を開始した日本ガードの浅野次長は「帰社後の事務作業が軽減されているし、営業案件が受注まで短縮化した。アプリもリアルで、機材の代わりになっている」と評価している。インフォファームの林貴康・アライアンス事業部研究開発室エキスパートは「とにかくリアリティを追求した。実際の機材音の再現性にはこだわった」と話す。さらに同社は「ALSOKと提携すれば、全国展開することもできる」(中村義則・アライアンス事業部研究開発室室長)と、“横展開”の可能性に大きな期待を寄せている。(谷畑良胤)

写真左から、インフォファームの林貴康・アライアンス事業部研究開発室エキスパート、中村義則・アライアンス事業部研究開発室室長、日本ガードの和田展如・営業部長、臼田実・機械警備部EDP室長、浅野敦・営業部次長
3つのpoint
・セキュリティ機材を持ち出さずに説明できる
・営業頻度を減らし、帰社後の事務作業を軽減
・リアリティの高いアプリで、顧客に印象づける