中小企業向けの会計システム市場で、販売店のSaaS対応に温度差が生まれている。有力メーカーのうち数社はSaaSへの取り組みを表明しているが、販売店によって、とる態度はまちまちだ。パッケージの販売実績が豊富な事務機ディーラーはSaaSに及び腰で、“身軽”な販売店はSaaSに積極的な姿勢を打ち出している。
NECと共同でSaaS型サービスを50種類まで拡充しているNECネクサソリューションズ(NECネクサ)は、オービックビジネスコンサルタントの「勘定奉行」と応研の「大蔵大臣」を自社のサービス基盤を用いてSaaS提供している。販売店は110社以上を数え、中小ソフトハウスや会計事務所などが揃う。
今後は全国に散在するNECの販売店約370社をSaaSパートナーに加える方針を明らかにしている。NECネクサの神蔵敏行・パートナービジネス営業事業部統括マネージャー兼第五営業部長は「今期で販売店は200を超えるのではないか」と期待を膨らませている。同社は、2009年4月に「らくらくアウトソーシングパック for 奉行21」を専属で販売する部門を組織した。神蔵部長は「退路を断って事業を推進してきた」と強い意気込みを語る。
もとをたどると、豊富な販売実績をもつ事務機ディーラーに「立ち打ちできなかった」(神蔵部長)ことが幸いした。「真っ向勝負ではなく、サービス基盤を生かして協業するモデルを築きたい」という。
全国に営業拠点を構えるキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)は、SaaSパートナーとしてのラブコールを寄せられている1社だ。しかし、いまだ慎重な姿勢をみせている。同社はむしろ、既存ビジネスの強化に乗り出しているところだ。基幹システム全体で同社のユーザーは1万3000社にのぼる。
会計システム市場は導入率が高く、バージョンアップがビジネスの主流となっている。キヤノンS&Sは、対象マーケットを広げることで導入社数の上積みを狙っている。これまでは、従業員30人以下のスタンドアロン版ユーザーが中心だったが、新規ユーザーの開拓に向けて、従業員30~500人の企業への営業活動を強化。従業員30人以下のユーザーをベースに、従業員30~100人をコア層、従業員100~500人をゴールド層と区分けし、なかでもコア層の増加を目指している。
ノークリサーチの調査によれば、ASP/SaaS形態のサービスを利用している年商50億円未満の中小企業は1.2%にとどまる。パッケージの販売が好調であれば、あえてSaaS提供に踏み切る必要がないと判断する販売店やメーカーは少なくないだろう。(信澤健太)
会計システム製品/サービスの利用形態
※年商50億円未満企業のケース