丸井グループ
会社概要:1931年2月17日創業。関東、東海や関西などにマルイ店舗を22店展開している。小売事業とカード事業、小売関連サービス事業の三つの相乗効果をいかした独自のグループ経営が同社の強みとなっている。
システム提供会社:構造計画研究所
プロダクト名:KKE/ShiftMaster(ケーケーイー・シフトマスター)
「KKE/ShiftMaster 0101」のシステム概要
小売業大手の丸井グループは、接客サービスの最適化を支援するシステムを導入した。工学的アプローチを得意とするSIerの構造計画研究所が開発した最適要員配置システム「KKE/ShiftMaster(ケーケーイー・シフトマスター)」をベースにカスタマイズして、丸井グループと共同で「KKE/ShiftMaster 0101」を構築。接客サービスを行う店員配置を支援するシステムで、接客の質や量を拡大させるものだ。およそ1年がかりでチューニングやカスタマイズを行った。

丸井グループの亀山朋幸・経営企画担当課長(右)と、寄川昌俊・経営企画担当チーフリーダー
小売業で成功するための三大基本要素は、「品揃え」「店づくり」「接客サービス」である。今回、丸井グループが導入したシステムは、「接客サービス」の最適化を目指したものだ。接客は、店員のスキルセットと顧客のニーズが合致してこそ効果が出る。店員のスキルセットを有効活用できなかったり、配置数が適正でなかったりすれば、無駄やコスト増を招き、売り上げも伸びない。そこで丸井グループが注目したのは、統計的、工学的な手法による接客サービスの定量化である。
工学的アプローチを得意とする構造計画研究所は、接客サービスの最適化を進める丸井グループに、最適化アルゴリズムや数理統計学的手法といった「科学的な手法を用いて問題を解決するオペレーションズ・リサーチ(OR)技術の活用を提案した」(構造計画研究所の池水憲治・オペレーションズ・リサーチ部技術営業担当)という。構造計画開発所は2007年頃、ある展示会で丸井グループの担当者と知り合ったのがきっかけで、定期的にITを活用した業務改革の提案を行ってきた。しかし、接客サービスは定量化しにくい分野であり、工学的アプローチやOR技術をどのように応用すべきなのか、議論は長く続いた。

構造計画研究所の矢野夏子・ORビジネスリンク室長(左)と、池水憲治・オペレーションズ・リサーチ部技術営業担当
検討の末、丸井グループが着目したのは、接客サービスを行う店員の出退勤を決めるシフト表だった。店員のスキルセットと顧客の来店動向を、「最も理想的な形に組み合わせることで接客サービスの質や量を高める」(丸井グループの亀山朋幸・経営企画担当課長)という狙いだ。質は顧客満足度につながり、量は接客サービスのカバー率を示す。両方が高まれば、売り上げや利益を増やせるというわけだ。丸井グループは、構造計画研究所が2009年に製品化した最適要員配置システム「KKE/ShiftMaster」をベースに、カスタマイズを加えることを決定した。
ポイントは、マルイ店舗の来客動向を分析し、店員の出退勤を最適化することにある。売り場を野球チームにたとえれば、すぐれた投手や打者が必要であるのに加え、内野や外野に配置するメンバーもバランスよく揃えなければ勝てない。「チームワークが勝敗を決める」(丸井グループの寄川昌俊・経営企画担当チーフリーダー)という。投手がいないのでは困るし、逆に投手ばかりでもダメ。そこで、最低限1人はエース級の店員を配置しつつ、他のメンバーで脇を支える布陣を組む。この組み方は、平日や週末、時間帯、商品特性、イベントの有無など複数の要因に大きく左右される。「来客動向に対応するために、カスタマイズやチューニングをおよそ1年かけて行った」(構造計画研究所の矢野夏子・オペレーションズ・リサーチ部ORビジネスリンク室長)。
2010年10月1日に、まずは比較的店員のスキルセットの差が小さい雑貨売り場から運用をスタート。最終的には、約3000人の店員すべてに適用していく予定だ。人的リソースの最適化を進めることで接客サービスを向上させ、ビジネス拡大につなげる。(安藤章司)
3つのpoint
・統計的手法で店員のスキルセットと顧客ニーズを合致させる
・接客サービスの「質と量」の最適化で売り上げや利益を拡大
・サービス業の生産性向上にオペレーションズ・リサーチ適用