NEC(遠藤信博社長)はこのほど、サーバー10台程度で社内システムを運用する中堅・中小企業(SMB)向けにブレードサーバー「Express5800/SIGMABLADE(シグマブレード)」のラインアップを強化した。具体的には、ブレードシャーシ内に収納できるUPS(無停電電源装置)ユニットやテープバックアップ装置などの製品化である。これら業界初となる製品を装備したブレードサーバーを、システム全体を仮想化や物理集約で効率化と省電力化を進める傾向が強まっているSMBに対して販売する。全国の認定ベンダーなどを経由したルートで流通させ、ブレードサーバー全体で今後1年間に2万台の販売を目指す。

UPS、テープストレージ、IOを内蔵したブレードサーバー。人物は、プラットフォームマーケティング戦略本部の本永グループマネージャー(右)と鈴木マネージャー(東京・秋葉原の「クラサバ市場」で)
ラック消費50%減
NECがブレードサーバーで強化したのは、ブレードシャーシの外部に取り付けられるのが一般的だったUPSユニット、テープバックアップ装置、IO(アイオー)共有スイッチを、シャーシ内に収納できる装置類として製品化した点にある。SMBでシステム統合する際に対象となる製品を一つのシャーシにコンパクトに集約でき、従来に比べてラック消費スペースを50%以上削減できるようにした。
同社がこの時期に、このような製品を出した理由について、本永実・プラットフォームマーケティング戦略本部グループマネージャーはこう述べる。「大規模企業では、サーバー仮想化に加えてクラウドなどサービス化への投資を加速するなど、システム統合化を終えつつある。一方で、中小規模企業は、仮想化や物理集約による効率化と省電力化を進めている段階にある」。SMBでは、これからシステム統合が本格化すると予測。専任のIT担当者がいないSMBが求める統合時の作業効率や統合後の運用性などのニーズを満たすために、このタイミングで上記の製品をリリースしたわけだ。
国内のSMBでは、コスト削減や運用効率を上げるため、SaaSやクラウドを利用する傾向がみられる。だが、本永マネージャーは、「OA系はクラウドに移行するが、業務系は物理集約に向かっている」とみており、ブレードサーバーの需要は依然高いという。同社によれば、SMBのブレード導入案件で仮想化案件数が2年前の3倍に伸び、SMB向けの拡販で力を発揮する地域チャネルでは、「タワー型やラック型に代わり、ブレードサーバーを積極的に販売する動きが盛んになってきた」(同)という。
今回の新製品は、仮想化技術を活用してSMBのシステム統合基盤となることを目的とし、既設のITインフラをコンパクトに統合でき、多くのサーバー管理に加えて仮想環境もシンプルに管理できるほか、ブレードシステムのなかでトップ水準の省電力技術を搭載した。
最も特徴的なのは、新製品の「SIGMABLADEーM専用UPSユニット」とLTO4のテープブレード「AT101a」をシャーシ内蔵型にしたことだ。UPSユニットは、ラックスペースを占有せずにブレードシステムの停電対策を行うことが可能になった。
テープブレードも大幅軽量化
プラットフォームマーケティング戦略本部の鈴木陸文・商品マーケティング統括グループマネージャーは、「ニッケル水素バッテリを採用し、鉛バッテリを使った一般的なUPSに比べて、小型・軽量化、長寿命化、充電時間の短縮を実現した」とアピールする。外付けUPSに比べて約20%充電時間を短縮でき、バッテリ交換も5年間不要になったという。また、バックアップもブレードシャーシ内のLTO4対応のテープブレードでできる。外付けテープが不要になり、IO共有スイッチとの連携でシャーシ内で自由に配置することができる。「新たに製品化したテープブレードは、外付けに比べて1台当たり約2Kg、1きょう体当たり16Kgも軽量化した」(同)と、サーバー機器設置に必要な床許容積載荷重が低いビルや建物などに配慮している。
UPSとテープブレードに加えて、今年4~6月には、「SIGMABLADE-M専用IO共有スイッチ」とSIGMABLADEとの連携機能やリソース管理機能を強化した統合管理ソフトウェア「WebSAM SigmaSystemCenter3.0」を製品化する予定だ。IO共有スイッチも、ブレードシャーシ内蔵型で業界初となる。一般的なサーバーでIOを拡張する場合は、LANやファイバーチャネルなどに応じて拡張カードをサーバー単位に増設する必要がある。しかし、内蔵型にすることで、IO共有スイッチに搭載した拡張カードを複数サーバーで共有するので、サーバー単位の拡張カード搭載が不要になり、構成の変更もソフトで容易にできるようになる。
販売の専任組織を新設
同社は今回の製品強化に向け、販売体制を拡充した。ブレードサーバーを含むプラットフォームシステムの販売を支援するため、クラウドや仮想化など複合的なシステム提案を行うスペシャリスト約30人の専任組織「ITNWソリューションセンター」を新設。また、2006年から地域を含めた販売会社向け認定制度を設けているが、これまでに約190社、約1000人が同社の認定資格を取得。東京・秋葉原の電気街にあるショールーム「クラサバ市場」を使ったプロモーションも本格化している。次のサーバー需要獲得に向け、製販両面で体制が整い、タワー・ラック型のサーバーだけでなく、ブレードサーバーでも年間販売台数シェア1位を狙う。(谷畑良胤)