2008年、米国を震源地とする金融危機によって、国内の製造業は甚大な影響を受けた。IT投資意欲は冷え込み、メーカーやSIerの決算内容にもその傷跡が見て取れたものの、2011年に入り、新規受注の獲得に向けて反転攻勢に打って出ている。ただし、先行きに油断は禁物だ。中堅・中小規模の製造業のニーズを汲み取るためのひと工夫、ふた工夫が求められる。「見せる化/見える化」や海外展開などの潮流に乗ることが商機を生みそうだ。(文/信澤健太)
figure 1 「市場動向」を読む
先行きに油断は禁物
調査会社アイ・ティ・アール(ITR)によると、2010年度の国内企業のIT予算は09年度からもち直してプラス成長となった。11年度は、IT予算を増額する企業が前年度の24.9%から29.2%に増加。IT予算を減額する企業は26.6%から17.0%に減少する見込みだ。製造業に限れば、IT予算を減額する企業は30.4%から18.1%にまで改善するが、成長路線に戻ったとはいえず、慎重な姿勢がみられる。日本銀行の12月全国企業短期経済観測調査によると、製造業の業況判断指数(DI)は前回調査の-32から-4に大幅に改善したが、予断は許さない状況だ。東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は「大手企業は投資意欲が上向き傾向にあるが、中堅・中小企業は部分的な投資にとどまり、横ばい」とみている。リード・レックスは「10年度は円高が進み、不況とのダブルパンチで第1四半期(3月期)までは市場が縮小していた。第2四半期に入って引き合いが増えている」という。
製造業の業況判断指数(DI)
figure 2 「勢力」を読む
富士通が広く支持を得る
調査会社ノークリサーチによると、年商500億円未満の中堅・中小企業(SMB)の生産管理システム導入シェアのトップは「GLOVIA-C(GLOVIA smartを含む)」。2位以下は「SCAW生産管理システム」「Explanner/Jシリーズ」と続く。09年に実施した同様の調査と比べると、「GLOVIA-C」が引き続きトップシェアを占めるものの、2位以下には大幅な順位変動がみられる。「Factory-ONE 電脳工場」や「TECHS」「R-PiCS」などのパッケージが上位から姿を消して、大手メーカー系のERPがシェアを伸ばした。単純な比較はできないが、従業員数300人から5000人未満の中堅企業を対象にITRが実施したメーカーシェアに関する調査では、オービックが先頭を走り、富士通が後を追う展開。日本インフォア・グローバル・ソリューションズ、NEC、リード・レックスなどが上位に顔を揃える。日本インフォアは年商500億円以上の規模の製造業に強いが、年商数百億円以下の企業からの引き合いも多くなっている。
生産管理システム製品/サービスのシェア
figure 3 「利用形態」を読む
パッケージと独自開発で二分
ノークリサーチによると、SMBの56.4%はパッケージを自社で購入し、社内人員か外部委託で運用している。41.4%は自社向けに独自開発し、同様に社内・社外のいずれかで運用している。ASP/SaaS形態のサービスを利用している企業は1.4%にとどまる。岩上由高シニアアナリストは、「小規模企業で、海外展開などに伴う新規導入であれば、ASP/SaaSが選択肢の一つとなる可能性がある」とみる。ただし、「中小企業向けクラウドサービスの『Dougubako』と『TENSUITE』をセットにする日立情報システムズのような取り組みが重要」と付け加える。日立情報はSaaS型「TENSUITE Sシリーズ」の個別受注生産型モデルを提供しており、「最短3日で導入が可能」(日立情報)だ。生産管理システムを導入していない年商50億円未満の企業を対象としている。SaaS型「R-PiCS」は、大企業の子会社や中小企業から引き合いがある。ただし、「結局、パッケージになる場合が多い」(リード・レックス)。日本インフォアもSaaSよりもホスティングの利用が増えるとみている。NECなどもSaaS提供に乗り出しているが、岩上シニアアナリストはメーカーが抱える問題点を「クラウドで選択肢が増えれば、販社の存在価値は上がるだろう。しかし、販社にどのようなメリットがあるのか、メーカーはメッセージが足りない」と指摘する。
「生産管理システム」製品/サービスの利用形態
figure 4 「可能性」を読む
「見せる化/見える化」と「海外展開」に商機
岩上シニアアナリストは、「見せる化/見える化」と「海外展開」を2011年の大きなトピックスとして挙げる。グロービアインターナショナルの「glovia G2」は、各現場や関連部門の状況、設計変更、進捗遅延などの異常発生をタイムリーに「見せる」環境を提供。アラート機能やドリルダウン機能、グリッドコントロール機能などを実装する。B-EN-Gは、独自のインメモリ連想技術が特徴であるクリックテック・ジャパンのBI「QlikView」による原価計算結果の分析機能を、標準で提供しているSaaS型「MCFrame online」を製品ラインアップに揃える。「生産管理システムとクラウドを結びつけるのがBIになるのではないか」と岩上シニアアナリストはみている。国内製造業の海外現地法人数を地域別にみると、中国やASEAN諸国などのアジア地域で増加傾向にある。こうした状況をみて、メーカー各社は海外事業を強化。リード・レックスは、JBCCホールディングスの傘下に入ったことで、同社の海外拠点を通じて拡販する体制整備を推進している。日立製作所や富士通などの大手メーカーは、海外支店と連携して販売活動を展開している。いずれのメーカーも、地場企業の開拓はこれから。あるメーカー幹部は「日本のビジネスモデルをそのまま海外に持ち込もうとしても成功しない」と釘を刺す。
現地法人(製造業)数の推移