コールセンター事業を展開するTMJは、10年ほど前から情報交換やノウハウの共有手段としてメールシステムとグループウェアを日常的に利用していた。だが、システムが老朽化し障害が増えたことから、システムのリプレースを決断した。メールサービスには「Gmail」を選定。ID管理を一元化するため、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)の「GreenOffice Directory」も導入した。
テレマーケティングジャパン(TMJ)
会社概要:コールセンターを主な業務として1992年、親会社のベネッセコーポレーションから独立分社化。900人の従業員と7000人のオペレータを抱え、札幌、東京、北九州、熊本にコールセンターを設置している。
システム構築会社:京セラコミュニケーションシステム
プロダクト名:Gmail、GreenOffice Directoryなど
システム概要図

KCCSの谷口直樹氏(左)と市川稔氏
900人の従業員を抱えるTMJ。従業員の半数はクライアント先に常駐していることから、情報交換やノウハウの共有を行ううえで不可欠となっているのが、メールシステムとグループウェアだ。「2000年ごろにベンダーの協力の下、グループウェアの『Lotus Notes』とメールシステムを自社構築して運用していた」(TMJのCC統括本部基盤構築部構築運用課・川田慎人氏)という。システムの老朽化に伴って障害発生の頻度が高まり、安定したサービス提供の継続が困難となってきた。
TMJでは08年にシステムのリプレースを決断した。想定していた要件では、リモートアクセスの負荷を軽減するため、ブラウザベースのグループウェアを導入して、グループウェアのメール機能とメールシステムを一つに統合。さらに社外で勤務する従業員や協力会社社員が携帯電話を利用して簡単に社内システムへアクセスできる環境を構築しようと考えていた。TMJのCC統括本部基盤構築部・許光秀部長は「なるべくSaaS/ASPのように、自社でシステムをもたない形でリプレースしたかった」と話す。
代表的なブラウザベースのグループウェア構築ベンダーの計6社に声をかけ、メールシステムのコスト面や容量、可用性を考え、メールサービスには「Google Apps」の「Gmail」を選定した。
TMJではすべてをSaaSで実現したかったが、セキュリティ上の懸念があったことから、オンプレミスでグループウェアを導入。SaaSとオンプレミスを連携して利用する必要性が出てきたため、社内システムとSaaSの間でアカウントを同期することが重要な要件となった。他のベンダーがスクラッチ対応を提案するなか、KCCSでは自社のID管理製品「GreenOffice Directory」を提案。パッケージの安定性やメンテナンス性も含めて評価が高かったことが決め手となった。「GreenOffice Directory」をハブにすることで、社内の人事管理システムとグループウェア、ディレクトリ・サービスの「Active Directory(AD)」、携帯向け認証サーバーにおけるIDの自動連携を実現。さらに「ADとGmailの連携を実現するために、インターナショナルシステムリサーチのGoogle Apps対応シングルサインオンサービス『Cloud Gate』を利用した」(KCCSのICT営業本部ソリューション営業2部アウトソーシングサービス営業課・市川稔課長)ことでオンプレミスとクラウドにまたがるID統合管理を実現した。
どこでもSaaSを利用して情報にアクセスできるとなると、セキュリティ上の問題がある。そのため「自宅での利用を禁止し、あらかじめ登録した端末だけ、SaaSを利用できるようにも配慮した」(KCCSの谷口直樹・ソリューション事業本部西日本ソリューションビジネス事業部長兼ERP事業部副事業部長)という。
昨年12月に本稼働を開始。セキュリティレベルを維持しながら、高速なリモートアクセスや、携帯電話での利用を実現し、利便性は格段に向上した。許部長は「ID管理製品を導入することによって、大幅な運用コストの削減にもつなげることができた」と満足している。(鍋島蓉子)

TMJの許光秀氏(左)と川田慎人氏
3つのpoint
・Gmailを中心としたメールシステムとグループウェアを構築
・パッケージで、安定性の高いID統合管理を実現
・ID運用管理コストを削減し、利便性を向上