内田洋行(柏原孝社長)は、2010年12月、販売管理システム「スーパーカクテルシリーズ」の海外販売に乗り出した。同製品のオフショア開発先であるベトナム資本100%のFUJINETと協力し、「スーパーカクテル デュオ販売」をベトナム向けにローカライズした「Fuji-Cocktail(フジカクテル)」を開発。ベトナム企業に向けて販売活動を展開している。
「Fuji-Cocktail」は、「スーパーカクテル デュオ販売」をベトナム語対応させたほか、ベトナム企業の商習慣や業務管理レベルに適応させたローカライズ版である。拡販するにあたって、内田洋行は現地に事務所は設けず、FUJINETを販売総代理店としている。FUJINETは、直接販売したりパートナーを介して間接販売したりすることができる。
価格は「日本の価格の3分の1程度を想定して、仕切り率などを設定している。日本円に換算すると、10クライアントで150万円弱くらいになるだろう」(角野雅夫・情報エンジニアリング事業本部企画部部長)という。
すでに、年商が約960万ドルで、ベトナム資本の通信機器卸売業者であるQuang Dung TEK(QD TEK)から受注しており、ホーチミンとハノイの2拠点に納入する計画だ。2011年7月に、まずホーチミン市で稼働を開始する。
QD TEKをファーストステップとして、ローカル大手を主要ターゲット層に据えて拡販していく方針を掲げている。このほか、現地に進出している、あるいは進出したい日系企業に対しても営業活動を展開していく。ベトナムに進出する企業を支援するコンサルティング企業などと協業し、人材採用や育成、現地での出店場所の検討などを含めて、トータルサポートで臨む。
同社によると、ベトナムでERPや販売管理システムを導入している企業は、20社ほどの引き合いがあるなかでは半分ほど。問い合わせてくる企業はIT投資に積極的だとして、市場全体では10%前後と見積もっている。経済成長に伴う企業数の増加や業務の高度化などがIT需要を後押しすると期待を膨らませている。
一方で、新興国に共通する問題も見逃してはならない。従業員が勝手に在庫を持ちだしたり伝票金額や単価を書き換えて差額を自身の懐に入れてしまったりすることがあるという。これには、権限のある人間でなければ単価の変更ができないといった機能を利用することで、業務品質を高める支援をしていく。
販売にあたって、ネックになりそうなのが価格だ。角野部長は「日本ブランドがあるので、安くすると悪影響が出てくる」と説明する。むしろ、現地企業にとってオーバースペックになりがちな「Fuji-Cocktail」の機能限定版などを要望次第で用意するという考えだ。
2011年の受注目標は8社。2015年までに累計200社の導入を目指している。今後もFUJINETにすべてを任せていくとは考えにくい。将来的には販社網を拡大していくとみられる。(信澤健太)

ベトナム・ホーチミン市で開催した製品お披露目の会見。日本からは柏原社長も駆けつけた