農薬を製造・販売する協友アグリ(小高根利明社長)は、日本インフォア・グローバル・ソリューションズのERP「Infor ERP LX」とBI「Infor PM アナリシス」を、8か月という短期間でビッグバン導入した。成功のカギを握ったのは、協友アグリのシステム導入責任者の強力なリーダーシップだった。
協友アグリ
会社概要:設立は1938年3月。約400種類に上る品目の除草剤や殺菌剤、 殺虫剤を製造・販売している農薬メーカーである。2004年、社名を八洲化学工業から現在の協友アグリに変更した。
サービス提供会社:日本インフォア・グローバル・ソリューションズ
プロダクト名:「Infor ERP LX」「Infor PM アナリシス」
「Infor ERP LX」を中心とするシステム関連図
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| システムの導入責任者を務めた協友アグリの白鳥吉久・執行役員経営管理部長 |
協友アグリは、約400種類に上る品目の除草剤や殺菌剤、殺虫剤を製造・販売する農薬メーカーだ。全農(全国農業協同組合連合会)との取引が全体の90%を占める。およそ20年前から販売管理、生産管理、会計管理システムを個別に導入し、NECのメインフレームなどの上で動かしてきた。
生産管理システムと販売管理システムは、同一品目でも異なる品名コードを使用。販売データは月次バッチで、また製造データは週次バッチで会計システムに取り込んでいた。受注状況はリアルタイムに生産現場に反映することが難しく、不良在庫が大量に発生していた。加えて、原価計算に時間がかかり、決算期間短縮の障害となっていた。
システム関連コストも重くのしかかっていた。ベンダーへの委託料やPCのリース料、通信費などを合わせると年間7500万円を費やしていた。
課題が山積するなか、企業体力の強化を目指して業務効率の改善や情報共有、経営判断の迅速化、システム関連コストの削減などに取り組むことを決断した。新システムの導入範囲は、販売、会計、生産をはじめとする基幹システム。従来の年間コストを上回らない予算を立て、下期が始まる2010年5月を本格稼働とするゴールを設定した。
システム選定の条件として掲げたのが、(1)データ連携、(2)リアルタイム処理、(3)ウェブ上の分散入力、(4)メンテナンスフリー、(5)内部統制への対応だった。ただ、社内にはシステム担当がいなかったため、コンサルタントを起用。RFP(提案依頼書)の作成や見積もり内容の査定、メンバーとの研修に協力を仰いだ。旧システムを熟知している全農ビジネスサポートの開発担当者にもプロジェクトに加わってもらった。
「Infor ERP LX」の選定ポイントは、プロセス系に強く、販売、会計、生産・原価管理の機能を実装している安価なパッケージであるという点だった。最終的には、「Infor ERP LX」を強く支持したコンサルタントの意見に従った。
プロジェクトの推進にあたっては、社内から30~40代を中心とするメンバーを集めた。システムの導入責任者に就いた白鳥吉久・執行役員経営管理部長は、「システムを選定する以前から合宿を行い、目的の明確化と最終イメージの共有に努めた。導入を決めた後も、トータルで2~3週間は初期教育に費やした」と話す。
予算とスケジュールを具体的に明示し、プロジェクトメンバーの共通認識としたのがシステムを導入するうえでの大きなポイントとなった。使い勝手よりも情報収集・管理の迅速化を重要視したほか、予算の制約を強く意識してアドオンを検討。日本インフォアはアドオンする際には、工数と金額を同時に提示することを徹底した。進捗は日々チェックし、浮かび上がってきた課題とその対応策をメンバーで共有。業務手順の作成マニュアルも作成した。「データの一貫性さえ確保できればと、割り切る」(白鳥執行役員)という姿勢もみせた。
「Infor PM アナリシス」は当初導入するつもりはなかったが、「『Infor ERP LX』で作表を追加するのをやめて、BIに変更した」と白鳥執行役員は説明する。
10年5月に稼働を開始し、業績の情報開示の迅速化やデータ処理の即時化、帳票出力の削減などでシステム更新の効果が現われている。システム関連コストは、最初の5年間を年間7000万円に抑え、6年目以降はその半分に削減できる見込みだ。(信澤健太)
3つのpoint
・システム導入責任者の強力なリーダーシップ
・予算制約を強く意識したアドオン
・割り切るという姿勢