高崎市立中央図書館は、今年4月の新館オープンに伴い、ICタグを活用した図書館情報総合システムを導入した。図書館の貸出/返却処理を自動化することで、利用者の利便性を向上。自動化書庫とも連携することで、図書館業務の省力化を実現した。
高崎市立中央図書館
施設概要:1910年9月開設。群馬県高崎市内にある六つの図書館の中核を担う。所蔵点数は約55万点(11年3月時点)、利用者数は年間約48万人(旧図書館)。今年4月に総合保健センターと併設する形で新館をオープンした。
プロダクト提供会社:日立製作所
システム名:図書館情報総合システム

白を基調とした開放的な空間に図書が並ぶ

自動貸出機。台にICタグリーダーを内蔵している

自動書庫の引出口。ここから本の引き出し、格納を行う

ICカードと連携した自動仕分機。ここから地域館に本を配送する
職員の業務負担を軽減
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高崎市立中央図書館 六本木和久主査 |
高崎市は、図書館の建物の老朽化に伴い、2009年に新図書館建設に着工。図書館の新システムの内部検討は同年5月から開始した。図書貸出、記録といった一連の業務の電算化はすでに終えており、今回の新システム導入は新しい機能を取り入れていくことを目的として検討を進めていた。そこで着目したのがICタグの活用だ。
高崎市立中央図書館 図書担当の六本木和久主査は、「ICタグはすでに多くの図書館で導入が始まっていて、それを導入して実現できることもおおよそ把握していた」と話す。中央図書館では、ICタグによる貸出・返却作業の自動化による利用者の利便性の向上や、蔵書の仕訳の自動化、また建設時からすでに組み込まれている自動化書庫との連携による図書館スタッフの業務省力化を目指した。
10年1月に委員会を立ち上げて、システムの選定に当たった。委員会では、3社のベンダーに声をかけ、プレゼンテーションを経て、その年の3月末に日立製作所に決定した。操作性に対する細かな要件もいくつかあったというが、最も重要なポイントとなったのは「旧来のシステムから完全なかたちで新システムに移行できること」だった。
10年4月からシステム構築を開始し、11年3月に稼働。図書館がオープンした11年4月から一般利用を開始した。新しい建物は5階、6階部分が図書館になっている。5階を一般図書エリア、6階を視聴覚エリアとして、利用者が自分で操作する自動貸出機を5階に3台、6階に2台、それぞれ設置した。利用者はICタグが貼られた図書を貸出窓口に持っていき、自動貸出機の台(ICタグリーダー)に乗せるだけで本を借りることができる。また、予約本コーナー専用の貸出機も設置。予約された本を受け渡す処理も自動化した。出入口にはゲートを置くことで、不正持ち出しを防止する。
従来、少し古くなった本などは、書庫に保管されるが、収めきれない蔵書に関しては、別の場所に倉庫を借りて対応していた。自動書庫を導入することで、それらの本をすべて格納。これまで利用者からリクエストを受けた本を職員が書庫に取りに行き、探し出すのに長い時間がかかっていたが、新システムとの連携によって、自動書庫から短時間で容易に取り出すことが可能になった。
また、六つの地域図書館は、すべての地域館にある本をどの館からも貸出・返却が可能になっている。中央図書館は各館から送られてくる本を仕分けし、配送する物流ハブを担っている。この仕分作業を簡略化するのが、ICタグを活用した自動仕分機だ。ICタグの情報を読み取ることで、各地域館に配送する本を仕分けるほか、中央図書館内の返却本を仕分ける際にも利用されている。
利用者が自動貸出機を自分で操作する仕組みの評判は上々だ。「まだ開館して3か月程度だが、前年同期比で1.7倍もの人が利用している。自動貸出機の導入によって、以前よりも多くの貸出処理に対応できるようになった」(六本木主査)と語る。いち早く使い方を覚えた小学生が、自分で機械を操作して借りていくという。有人の貸出カウンターを通す必要がないので、利用者のプライバシーを保護できるという副次的な効果もあり、自動貸出機の利用率は高まっている。六本木主査は「貸出機の利用率をさらに高めたいと考えている。利用状況によっては、貸出機を増設することも視野に入れている」と話している。(鍋島蓉子)
3つのpoint
・ICタグによる貸出・返却作業などの自動化
・建物に組み込まれている自動書庫との連携
・旧システムからの完全な移行を実現する