6月2日開催の「2011亜太ソフトウェア企業交流商談会」(日中ソフト交流商談会)では、台湾と日本の代表的なソフト団体のトップが顔を合わせ「ゴールデントライアングル」構想の実現に向けた議論を展開した。商談会は今回で3回目だが、依然としてそのロードマップや具体策がみえてこない。そこで、中華民国情報産業協会(CISA)の劉瑞隆理事長に直接インタビューし、今後の推進策を聞いた。
台湾側は中国・世界展開を練る
――IT業界で台湾、日本、中国の「ゴールデントライアングル」構想をどう具体化するか。 劉 まず台湾側では、台湾のIT企業であるEMS(電子機器受託生産)の鴻海精密工業(フォックスコン)やパソコンメーカーのエイサーなど、世界で活躍した成功要因を分析する。このハードウェアの成功モデルをソフトウェアに適用したマネジメントを確立する。そのうえで、日本をはじめ世界のIT商材を台湾ベンダーで仕込み、中国や世界へ効率よく販売していく力をつける。
――日本側の役目は?
劉 日本のITベンダーがもつ技術力や製品力は、世界でもトップレベル。ただ、中国をはじめ世界に展開することには苦手意識が強い。「スマートグリッド」や「スマートシティ」など次世代IT技術に長けているので、アジアの“シリコンバレー”的な役割を果たしてほしい。台湾のITベンダーはその技術を世界の各地の仕様に適用した製品に仕立てて、販売する役目を担う。
――アジアを見渡すと、IT技術力の観点ではインドもハイレベルだが。
劉 ITの内需がしっかり存在しており、マーケットも定着していて、そこで実績のある製品を出している日本のITベンダーと組みたい。インドのIT内需は世界的にみればまだ低いレベルにある。インドと一緒に展開するのはまだ先だ。
――次世代IT技術以外に、世界展開するに際して、日本のITベンダーが出す製品のなかで期待できるモノはあるか。
劉 医療、銀行や証券会社向けのパッケージは、いい製品が揃っていて、とくに中国展開に向いている。
――台湾と日本のITベンダーでは、何を具体的に推進していくのか。
劉 すぐに中国市場で展開するのではなく、台湾と日本のITベンダー同士でパートナーシップを強化し、共同開発して両市場で販売し、実績をつくりたい。台湾は開発コストが日本に比べて格段に安く、メリットが大きい。「ゴールデントライアングル」の最終目標は、アジアでデファクト(事実上の業界標準)をつくり、それを世界に展開することだ。