日本ヒューレット・パッカード(日本HP、小出伸一社長)は、全国のSIerやITサービス事業者に対して自社製品・サービスの利点を紹介するイベント「HP Partner ロードショー」を開始した。7月下旬から9月下旬までの2か月間に、主要20都市を回る全国イベントで、日本HP製品を販売する再販企業(パートナー)を増やすことが主な目的だ。開催都市の一つである兵庫県・神戸市のイベントに参加し、杉原博茂執行役員と玉利裕重統括本部長にインタビューし、今回のイベントの感触と日本HPのパートナー戦略について聞いた。(取材・文/木村剛士)
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| 玉利裕重統括本部長 |
「HP Partner ロードショー」は、日本HPが毎年開くイベントで、新規パートナーの開拓と、既存パートナーとの関係強化が開催の主な目的だ。今年は全国の主要20都市で開催し、1会場につき約100人、合計で約2000人の来場者を見込んでいる。
日本HPは、サーバーやストレージ、ネットワーク機器、パソコンなど、日本HP製品をディストリビュータから購入して再販するSIerとITサービス事業者を、主に三つに区分している。(1)プレミアビジネスパートナー(2)ビジネスパートナー(3)販売店──がそれで、取引額に応じて分け、それぞれにマッチする優遇制度と支援内容を用意している。最も取引金額が大きい(年間10億円以上)プレミアビジネスパートナーは、手厚い支援を受けられるわけだ。
今年の「HP Partner ロードショー」は、この3区分のパートナーのうち、主に販売店の新規獲得を狙って開催している。東名阪といった主要商圏だけでなく、地方での販売を伸ばしたい日本HPにとって、地域のSIerとITサービス事業者との協業は必須とみて、今回のイベントでは、新規パートナーの開拓に照準を合わせた。
8月上旬に神戸で開催したイベントのプログラムは、日本HP製品を販売したことがないSIer・ITサービス事業者にも訴求できるように、内容をわかりやすく工夫。製品・サービスの紹介では、「節電」をキーワードに、パソコンからプリンタ、サーバー、ストレージ、ネットワーク、ITサービスまでを網羅した。最後には、販売パートナー制度の詳細を解説し、合計約3時間をかけて説明。兵庫県を中心とした関西圏に所在するITベンダーに対して、日本HPと組む利点を訴求した。
玉利裕重・パートナービジネス統括本部長は、「パートナーを通じた地方ビジネスの活性化は、今年度の大きな注力ポイント。闇雲に数を増やすつもりはないが、密接な関係をつくることができる販売点を全国でもっと増やしたい」と構想を語る。日本HPの販売店は、現在約2000社。これを3000社にまで増やすのを目標としている。
続けて玉利統括本部長は、「国内の競合メーカーに比べて支店・支社が豊富ではない日本HPにとって、地域のIT企業と直接会って話をする場は非常に貴重。また、今回は初めてディストリビュータの協賛を得て共同開催というかたちを取ることができた。地方のIT企業、ディストリビュータ、そして日本HPという三者の連携をさらに加速させたい」と手応えと意気込みを語っている。
<杉原博茂執行役員が語る プラットフォーム製品の売れ行き>  |
| 杉原博茂執行役員 |
東日本大震災の後、企業の間ではITの投資計画や利用体制、つき合うITベンダーを見直そうという動きが、全国的に広がっているように感じる。ITコストの削減意欲は、リーマン・ショックの頃よりも強く、災害対策への関心は、米国同時多発テロの時よりも高いようだ。ユーザー企業は、今回の震災をきっかけとして、「迅速に製品を用意してくれる」「部材を安定確保し継続的に製品を提供してくれる」「節電効果の高い製品を豊富にもつ」メーカーを選ぶようになった。
そんな状況にあっては、日本HPのグローバルのサプライチェーンと、東京都内に設置する工場、大企業向けから中小企業向けまでカバーする豊富な製品群をもつことが強みになってくる。サーバー、ネットワーク機器、ストレージのすべてが前年同期に比べて2ケタ成長している状況だ。また、買収したクラウドストレージサービスを提供する3PARのソリューションが、非常に好調に推移しているのも好材料だ。
地方のパートナーは、非常に大切だと捉えている。サーバーやパソコンなどの製品を販売するマーケットとして、伸びしろが大きい。それだけでなく、クラウドビジネスでも地方のパートナーと協業できると思っている。日本HPは、通常の販売パートナー制度のほかに、今年4月から仮想システムやクラウド環境を日本HP製品を活用して構築できるITベンダー向けのパートナー制度「PartnerONE」を推進している。これは東京などの主要商圏だけでなく、地方でクラウドビジネスを展開したいITベンダーにとっても有益なプログラムだ。今回の「HP Partner ロードショー」では、日本HPの販売パートナー制度の内容が中心だが、今後は、「PartnerONE」に参加してもらえるパートナー企業も全国で探すつもりだ。(談)