日本企業と中国企業とのビジネスマッチングイベント「日中ものづくり商談会@上海2011」が、9月6~7日の2日間、中国・上海市のイベント会場「上海世貿商城(ShanghaiMart)」で開催された。14回目を迎えた日中の企業の橋渡し役を担う展示会・商談会は、過去最大の盛り上がりをみせ、出展企業と来場者、商談件数は過去最高。中国市場でのビジネス拡大を狙う日本企業の意気込みを感じるイベントになった。(取材・文/木村剛士)
来場者数と出展社数はともに過去最高
日中ものづくり商談会は、日本企業と中国企業との協業促進を目的とするイベントだ。日本と中国の製造業が、自社製品・サービスを展示し、協業の可能性がある相手企業と商談したり、製品・部品の売り手や買い手を見つけたりする場となる。日本企業にとっては、中国での顧客獲得や販路拡大、中国製品の部品調達、共同開発体制の確立などのきっかけづくりになっている。2005年に第1回を開催、今回で14回目を迎えた。主催するのは、上海に拠点を置くNCネットワークチャイナ(2011年10月1日に「ファクトリーネットワークチャイナ」に社名変更)である。
今回は「日中ものづくり商談会@上海2011」のタイトルで、9月6~7日の2日間開催した。初日は出展企業同士の商談日で、2日目は一般参加者を招いた。出展企業469社でブース数は500、来場者数は約8600人、商談件数は約1万5000件。すべての項目で過去最高だった。 日中双方の企業ともに、大半の参加企業は製造業だが、日本のソフトメーカーとSIerが十数社出展していた。アスプローバ、インテック、クオリカ、サイボウズ、新日鉄ソリューションズ、日立情報システムズ、菱洋エレクトロ、DTSの各中国法人などがブースを構え、来場した中国企業の担当者などに自社製品をPRしていた。

14回目となる今回は過去最大の規模で、例年以上に多くの来場者が詰めかけ、会場は熱気に包まれた
菱洋エレなど日本のIT企業も出展
イベントに出展していた菱洋エレクトロ(上海)は、過去にも「日中ものづくり商談会」に出展したことがあるリピーターだ。「新規顧客を獲得するのに効果がある」(田端慎吾総経理)という。同社は、中国市場での半導体販売事業がメインだが、ブースではおよそ4年前から販売を始めたIT製品を主に展示。なかでも「この2年の間にニーズが強まってきた」というセキュリティ製品を提案していた。
田端総経理は、「中国に進出した日系企業は、(日本の)本社よりも情報に対するセキュリティ意識は低い。だが、(日本)本社からセキュリティ対策の徹底を要求されるケースが多くなり、セキュリティ製品を購入する企業が増えてきた」と状況を語り、中国でのセキュリティ関連製品の販売増に期待している。
このほか、日立情報システムズやDTSは、来場者が主に製造業であることを意識して、プロジェクト管理ツールや販売・生産管理システムを出展。一方、国内のグループウェア市場でトップシェアのサイボウズは、日本語・中国語・英語に対応したグループウェア「サイボウズ弁公系統」を出展。中国市場で獲得ユーザー数が200社を超えたことをアピールし、「混戦状態にある」(黄淵総経理)という中国グループウェア市場で一歩抜け出そうと懸命にPRしていた。
イベントを主催したNCネットワークチャイナの井上直樹董事長は、「製造業に絞り、日本と中国の両企業を招いた、ここまでのイベントは中国にはないだろう」と話す。その言葉通り、会場には日本と中国の企業がともにビジネスを拡大させていこうという熱気が感じられた。

日本のITベンダーも十数社、ブースを設置していた。写真は菱洋エレクトロとサイボウズの中国子会社
主催企業のトップに聞く
イベントを終えて
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NCネットワーク チャイナ 井上直樹董事長 |
過去最高の出展企業数と来場者数、商談数を記録し、新たな協賛企業・団体も獲得できたことは、大きな成果だった。これまでのなかで、最も大きな満足を得た。展示スペースも過去最大だったが、ブースの展示方法や、商談をスムーズに行うための事前調整など、出展企業と来場者がともに満足してもらえるように工夫し、それがうまく機能した。
第1回を開催した際の出展企業はわずか29社。そこから着実にイベントを大きくしてきた。参加企業が一気に増えたのは、リーマン・ショックの後だっただろう。日本企業は自国の景気が低迷したことで、中国に活路を求めてきた。その後も中国にビジネス機会を求めて進出してくる日本企業が多く、今回過去最大の規模でイベントを終えることができた。来年も同じ時期に開催する予定だが、その前に、ニーズが強いので、同様のコンセプトのイベントを広東省で開くことも検討している。日中の製造業を結びつけてほしいというニーズは、上海だけでなく他の都市にも広がっている。
10月1日には、当社は「ファクトリーネットワークチャイナ」として再スタートを切る。製造業のビジネスを支援する企業であることをわかりやすく表現するためだ。「アジアの製造業向け情報なら、ファクトリーネットワークチャイナ」と多くの人に認知してもらうために、これからも力を尽くしていく。(談)