「今後、IT業界を活性化するには、M2Mしかない」──。新世代M2Mコンソーシアムの奥屋滋理事はこう断言する。このところ、機器同士が通信し合う「M2M」の事業化が盛んになってきている。NECが9月にM2Mサービス用のシステム基盤の提供を開始するなど、大手ITベンダーは取り組みを加速化している。
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新世代M2M コンソーシアム 奥屋滋理事 |
昨年10月に設立された新世代M2Mコンソーシアム(森川博之会長=東京大学先端科学技術研究センター教授)は、ITベンダーや通信事業者を中心に、約60社の加盟企業を有し、M2Mのビジネス化を目指して、加盟企業間の連携づくりに注力している。会長代行の奥屋滋理事(NECキャリアサービス事業本部副事業本部長兼ネットワークサービスシステム事業部事業部長)は、「今後、M2Mのビジネス化を実現するために、ITと通信の両分野から多くの企業が連動して、水平統合型のプラットフォームを開発する必要がある」とみている。
技術基盤であり、事業概念でもあるM2M。「シティ(都市)」という広い枠でさまざまな機器を接続し合い、通信サービスやアプリケーション開発を展開してはじめて、M2Mは大きなビジネスにつながる。ITベンダーや通信事業者など、各プレーヤーが単独で製品やサービスを開発しても、それらの土台となる統合プラットフォームが存在しなければ、M2Mの本格的な事業展開が始まらないというわけだ。しかし、主要M2Mプレーヤーは、「自社のビジネスが絡むということもあって、これまでは各社は単独で取り組みを進めてきた」(奥屋理事)というのが現時点での課題。それを解決するのが、次世代M2Mコンソーシアムの大きなミッションだ。奥屋理事は「今後は各社がもつM2Mシステムを結びつけて統合化を図ることが必須になる」とみており、早期に大型連携を組む必要があると熱っぽく語る。
次世代M2Mコンソーシアムの組織は、理事会に直属する「情報交換ワーキンググループ(WG)」と「相互連携WG」から成る。相互連携WGでは今、各社のシステム連携に向けて、インターフェースなどの技術面での検討・検証が活発に進んでいる。富士通、NEC、日立製作所が中心になって、各社システムのオープン化/統合化について議論しているところだ。奥屋理事は、「話が具体化の段階に入っており、近々にも各社の得意分野を生かした『大きいクラウド』が誕生する可能性がある」と、3社で連携した展開が動き出すことをほのめかす。
今後、統合プラットフォームを踏まえたM2Mビジネスが確立すれば、都市インフラの改善を図る「スマートシティ」が具体的な形になる可能性も高まる。日本は欧米やアジアの新興国と比べてスマートシティ化が遅れているが、電力供給不足とベンダーのM2M事業本格化が相まって、スマートシティを実現する条件が揃っている。大手ITベンダーは、いかに早くM2Mの大型連携を実現するか。スマートシティの普及とそれによるIT業界の活性化のカギを握っている。(ゼンフ ミシャ)