ネットサービスに特化した新規事業の立ち上げを専門に行っているサイボウズスタートアップス(山本裕次社長)は、一般公募者がサイボウズなどのクラウドサービス上で展開するサービスを企画できるスタートアップ支援プログラムを展開している。低価格で単機能・シンプルなサービスの開発を指向しており、大量販売による収益モデルを構築する考えだ。
サイボウズスタートアップス(Cstap)は、今年9月、スタートアップ支援プログラムの第一号サービスとして「安否確認サービス」を発表した。年内のリリースを予定しており、「正式には決定していないが、500ユーザー程度で月額2万円を想定している」(山本社長)。Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)上で提供し、初年度に200社の利用を目指す。
このほか、ルートセールスと新規開拓、エンドユーザー管理の3種類の顧客情報管理(CRM)も年内のリリースを予定している。2012年末までに、10種類の新サービスをリリースする計画だ。山本社長は、「すべてのサービスを3画面の切り替えで理解できるくらいにシンプルな構成にしていく」と説明する。
同社が目指すのは、一般公募者が開発したシンプルで低価格なサービスのラインアップを増やし、大量に販売していく薄利多売のビジネスモデルの構築だ。それぞれのサービスについては、提供開始から半年程度で黒字化を達成したい考え。導入数が伸びれば、さらなる低価格ですそ野を広げるという。
一般公募者は、Cstapが実施する持ち込み企画の審査や面接を経て、事業化のめどが立った段階で新会社を設立し、サイボウズブランドでサービスを展開する。Cstapは、サービス契約や代金回収、PR業務などをサポートするほか、APIを活用したサイボウズ製品との連携を支援したり経理・財務業務についてアドバイスしたりする。
Cstapがスタートアップ支援プログラムを展開する背景には、IT利活用に対する企業の意識の変化やクラウドサービスの台頭がある。山本社長は、「ITベンダーは、差異化のために製品の高機能化を追求してきた。だが、ユーザー企業の多くは、低価格でシンプルなサービスを望むようになってきている」とみる。Cstapの取り組みはこうしたニーズに応えるものというわけだ。
販売パートナーの視点に立てば、低価格で旨みの少ないサービスである。そのため、販売チャネルはおのずと限られてくる。「誰の説明もいらない」ことを謳い、当面はCstapがウェブ上で直接販売する方針だ。
低価格で単機能・シンプルなサービスは、ウェブ上に氾濫している。山本社長は、「競争に勝った企業が市場のすべてをもっていく。勝てるメーカーになることが重要だ」という。道のりは平坦ではないことは確かだ。(信澤健太)