米国に本社を置くSaaSアプリケーションベンダーが、国内市場に参入してきている。タレントマネジメントシステムを開発・販売するベンダーは、SaaS市場で急成長。2011年には、経費管理に特化したコンカーが国内で事業を開始した。独立形ソフトウェアベンダー(ISV)やシステムインテグレータ(SIer)の間で、協業を探る動きが活発化しそうだ。
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| 10月にコンカーの社長に就任した三村真宗氏 |
調査会社のミック経済研究所によると、2010年度の国内SaaS市場規模は前年度比11.9%増の1605億8800万円だった。2011年度は、前年度比13.3%増の1819億5100万円となる見込みだ。なかでも人事・人材管理市場は29.6%増、ERP・会計市場は23.1%増と、平均以上の成長を予測している。タレントマネジメントは、給与計算や就業管理などとは異なり、新しいサービス領域として市場拡大に寄与している。
最近の動きで注目されるのが、経費管理に特化したベンダーであるコンカーの国内市場への参入だ。2011年2月、ベンチャーキャピタルであるサンブリッジとの合弁会社として設立され、製品の日本語化を図るなど、事業本格化への準備を進めてきた。10月には三村真宗氏が社長に就任した。
お膝元の米国では、コンカーは1万社の納入実績をもつ。日本でも外資系企業を中心に110社ほどがすでに同社の経費管理アプリを利用している。三村社長は、「多言語対応なので、全世界での展開が容易だ。グローバルで異なるERP(統合基幹業務システム)でも、経費精算は共通化しているユーザー企業が多い」と話す。「大方の企業は、仕方なく自社でつくり込んでいる状況だ」ともいう。コンカーの入り込む余地が大きいというわけである。
サービスは、マルチテナント型アーキテクチャを採用し、パラメータ設定で機能を変更することができる。クレジット請求や電子領収書を自動的にインポートし、出張経路と比較することで、正確な経費(旅費・交通費)を確認できる。また、経費精算の規程を組み込み、経費として使った金額が規程に準拠しているかどうかをすぐに確認することが可能。分析機能にも特徴がある。IBMの「Cognos」をバンドルして提供しており、規程の見直しや管理上の問題などの洗い出しに役立つ。
モバイルデバイスへの対応を進めており、iPhoneをはじめ、iPad、Android、BlackBerryで利用できる。
平均導入期間は1か月。経費精算レポート数に応じて課金する。三村社長は、「全世界のコンカーのトランザクション上の金額は3兆円。コンカーの売上高が300億円程度だから、平均すれば1万円の経費精算に100円かかる計算になる」と説明する。
直接販売を中心に、パートナーからの案件紹介制度を設け、拡販に乗り出している。ISVやSIerとの協業は手探りの状況だが、OEM(相手先ブランド供給)や導入・販売パートナーの獲得など、選択肢はいろいろとある。
タレントマネジメントのベンダーも国内ベンダーとの関係強化を熱心に進めている。今後新たな商機が生まれてきそうだ。(信澤健太)