東日本大震災の直後にスタートした今年度(2011年4月~12年3月)。x86サーバーの出荷台数にも悪影響が出ることが予想されたが、実績はその不安とは裏腹に大きく成長した。上期(4~9月)は、前年同期に比較して6.7%伸び、27万台に迫る勢い。このままいけば、通期で4年ぶりの54万台超えもありそうだ。IT産業全体の浮き沈みのバロメータとなるx86サーバーの販売状況を、最新データをもとに俯瞰する。(文/木村剛士)
figure 1 「市場規模」を読む
上期は好調で6.7%増、2期連続プラス成長
x86サーバーの出荷実績の最新データによると、2011年4~9月(上期)の出荷台数は26万7852台。前年同期に比べて成長率は6.7%だった。伸びた理由として、まずネットサービスを手がけるユーザー企業の需要が旺盛であること、業種を問わずサーバー統合用にハイスペックなサーバーを購入する機運が高まっていることが挙げられる。この傾向は数年前から続いており、今年度上期も続いている。そして、「3月に出荷する予定だったサーバーが、東日本大震災の影響で4月にずれこみ、今年度上期にその実績が含まれたことも数字を押し上げた理由」と、調査を行ったノークリサーチの伊嶋謙二社長は分析している。通期(4月~3月)の見通しも増加が見込めそうだ。11年10月~12年3月(下期)の出荷台数は、5.5%増の27万4200台と予測。通期では、6.1%増の54万2052台としている。実現すれば、4年ぶりに54万台を超えることになり、過去10年で3番目に多い台数を出荷することになる。
国内x86サーバーの出荷台数推移
figure 2 「シェア」を読む
NECがトップ死守、忍び寄る2位と3位
伸びた上期でシェアトップを獲得したのは、出荷台数、金額ともにNECだ。10年度の通期シェアと比較すれば、台数で0.5ポイント、金額で0.9ポイント落ちたものの、No.1のポジションを守った。2位の日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、前年同期比11.6%増と市場全体の伸び率を上回る好成績。10年度通期のシェアに比べて、台数で1.2ポイント、金額で0.8ポイント上げた。その要因として「製品供給力の強さとチャネル(間接販売するITベンダー)の後押しがあった」(ノークリサーチの伊嶋社長)とみられる。日本HPと同様に2ケタ成長したのは、3位の富士通だ。前年同期比11.4%増で、シェアは台数で21.1%、金額で21.2%。台数シェアは3位で、10年度通期と変わらないものの、金額シェアは2位の日本HPを上回っている。単価の高い機種の販売が好調だったことがうかがえる。4位はデルで変わらないが、前年同期比15.8%減と低迷。5位の日本IBMは8.2%増、6位の日立製作所は17.3%増でともに伸びた。
x86サーバーのメーカー別シェア(2011年度上期)
figure 3 「“もう一つ”のシェア」を読む
“オープンチャネル”では日本HPがトップ
x86サーバー市場を知るうえで重要なレポートがある。IDC Japanが2011年9月に出した「メーカーの“オープンチャネル”向け出荷台数シェア」だ。IDC Japanが定義するオープンチャネルとは、ディストリビュータやSIer、ITサービス会社などのITベンダーで、メーカーの系列SIerや関連会社は、ここに含まれていない。IDC Japanは、x86サーバーの出荷ルートを、「ベンダーダイレクト(メーカーが直接ユーザーに販売)」「関連会社(系列・関連ITベンダーを経由してユーザーに販売)」「オープンチャネル(定義したITベンダーを経由して販売)」の三つに分けた。そのなかで、オープンチャネルは、全出荷台数の約40%を占めると分析した。このオープンチャネルのシェアは、1位が日本HPで、2位がNEC、3位が日本IBMになっている。1位の日本HPのシェアは39.7%で、2位のNECとは19.1ポイントも差をつけ、圧倒的に優位にある。「大手ディストリビュータが扱う主なx86サーバーとして、日本HPの地位は強固」であることを、IDC Japanでは理由に挙げている。オープンチャネルの出荷台数のうち、ダイワボウ情報システム(DIS)とソフトバンクBB、大塚商会の3社が65%を占めている。日本HPはこの3社を経由して販売する台数が圧倒的に多いことがわかる。
x86サーバーのチャネル経由のメーカー別シェア(2010年年間)
figure 4 「仮想化」を読む
不可欠になるサーバー仮想化ソフト
仮想化技術を活用したサーバー統合の流れは、全業種とも、引き続いて2012年も強いニーズがあるだろう。ユーザー企業・団体は、複数台保有している既存のサーバーを、一つに集約するための新しいサーバーを買い求めることになる。そうなると、ITベンダーがサーバーを売るためには、仮想化ソフトとの組み合わせが欠かせないことになる。とくに仮想化技術の採用が今後急速に進むとみられる中堅・中小企業(SMB)に、サーバーを売るためには必要不可欠だろう。図には、年商5億円以上500億円未満のユーザー企業に対して、「活用している」または「今後活用予定」の仮想化ソフトをたずねた結果である。仮想化ソフトの種類としてはヴイエムウェアのソフトがやはり強くてトップだ。ただ、SMBのマーケットでは、日本マイクロソフトも奮闘している。「Microsoft Hyper-V(『Windows Server OS』に組み込まれたもの)を活用中・活用予定」と回答した比率は29.7%になる。年商500億円以上の企業に対して、同じ設問で同様の回答を得た比率は19.3%で、約10ポイントも開きがある。SMBのユーザーのほうが、「Microsoft Hyper-V」を検討する割合が高い。また、OSに組み込まれた仮想化ソフトを活用したいと思う比率も高く、単独でソフトを購入するよりもOSやサーバーに組み込まれた状態で利用したいと考えているSMBが多いのも注目点だ。
サーバー仮想化ソフトの活用状況(2011年1~2月調査)