ネットサービスのムビチケ(高木文郎社長)は、映画の前売りチケット販売サイト「ムビチケ」を、日本マイクロソフトのクラウド「Windows Azure Platform」を活用して立ち上げた。「いつ・どの程度」のアクセス数が集まるかを予測しにくいネットサービスを支える情報システムは、オンプレミス型ではなく、データの処理能力を迅速・柔軟に増やすことができるクラウドが適していると考えた。「『Windows Azure Platform』以外に、当社の要求を満たすシステムがなかった」と高木社長は振り返る。
ムビチケ
会社概要:映画の前売りチケットをウェブサイト「ムビチケ」を通じて販売する。角川メディアハウスや、前売りチケット販売のメイジャーなどが出資する。「ムビチケ」を立ち上げるために2011年7月に設立された。
システム提供会社:日本マイクロソフト、システムコンサルタント
サービス名:クラウドサービス「Windows Azure Platform」
Windows Azureの概要

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ムビチケ 高木文郎社長 |
「ムビチケ」は、公開前の映画鑑賞券の販売に特化したネットサービスで、ユーザーはパソコンやスマートフォンを使って、観たい映画や券の枚数、映画館、座席を指定してクレジットカードなどで決済し購入する。鑑賞する当日、会場に設置されている自動発券機で受け取る仕組みだ。2011年夏にサービスを始めた。高木社長はサービスを開始した理由を、「前売り券の販売に特化したネットサービスがなく、映画業界を活性化したいという思いから始めた」と説明する。
サービスを立ち上げるために重要だったのが、多くの映画配給会社と映画館運営会社との協業体制を構築することだったが、それとともにポイントになったのが、ネットサービスを動かす情報システムだった。
ネットサービスは、「いつ・どの程度」のアクセス数になるかを正確に把握しにくい。人気のある映画の前売り券の販売を始めれば、多くのアクセスが集まることは予想できるが、それがどの程度かを見定めるのは難しい。また、発売時には人気がなくても、著名人がソーシャルメディアで推薦コメントを書けば、鑑賞券を購入したいと思うユーザーが一気に増えることも考えられる。
予測していなかった大量のアクセスが集まった時、万が一システムが止まったら、販売を伸ばす絶好の機会を逃すことになる。絶対に避けなければならないことだが、通常時に必要な処理能力以上のシステムを購入すれば、ITコストが膨大にかかってしまう。システムの処理能力を柔軟に増やしたり減らしたりすることができて、大量にアクセス数が集まっても止まらないITインフラを求めた結果、オンプレミス型のシステムではなく、クラウドに行き着いたわけだ。
「Windows Azure Platform」を選んだのは、「ほかに要求を満たすものがなかったから」と高木社長は言う。「ムビチケ」のウェブサイトには、「Powered by Windows Azure」というロゴを掲げ、「Windows Azure Platform」でサービスを稼働させていることを示している。
システム構築を日本マイクロソフトと共同で手がけた独立系ソフト開発企業、システムコンサルタントの坪田竜一・第一営業部クラウドシステムインテグレートサービス担当マネージャーは、「クラウド関連の事業を伸ばしていく方針のなかで、今回のプロジェクトは、自信につながった。これを機に、クラウドを活用したITインフラの基盤構築事業を伸ばしていきたい」と話している。
柔軟にコンピュータリソースを増減させることができるクラウドの特性を、うまく活用してサービスを立ち上げたユーザー。「インフラ系のシステム提案をこれまであまり手がけていなかった」(坪田マネージャー)なかでその分野のプロジェクトを成功させたITベンダー。ともにクラウドの恩恵を享受した事例だ。(木村剛士)
3つのpoint
・処理能力を柔軟に変更できるシステムを要求
・信頼性と拡張性を評価して「Windows Azure」を採用
・構築したITベンダーは今回を機にクラウド事業を強化