ディサークル(西岡毅社長)は、このほど主力のグループウェア・ワークフロー最新版「POWER EGG 2.0 Ver2.3」の販売を開始した。情報系システムで利用が広がるスマートフォンに対応したほか、競合製品に対抗して多言語オプションなどを新たに搭載。1月中旬には、「POWER EGG 2.0」上で簡単にデータベース(DB)を作成できる「Webデータベース」の提供も始めた。堅調に推移するIBMの「Notes」からのリプレース時の移行を簡易にし、サイボウズの「デヂエ」など、競合製品との差異化点を際立たせた。また、北國銀行に導入した「POWER EGG」が本稼働したことを受けて、地方銀行や信用金庫向けの代理店販売も本格化したこともあり、一気にグループウェア上位ベンダーの追い上げを狙う。(取材・文/谷畑良胤:本紙編集長)
スマートフォン/多言語に対応
 |
| 西岡 毅 社長 |
「POWER EGG2.0 Ver2.3」は、ソフト内にあるデータを、社外などさまざまな場所で情報共有し、活用できるようにするためにスマートフォン用のオプションを新しく搭載した。また、世界展開する企業が増えてきたことから、海外拠点での利用を想定して、「多言語オプション」を実装した。1月中旬には、「POWER EGG2.0」上で誰でも簡単にDBを作成できる簡易型の「Webデータベース」の出荷を開始。「Webデータベース」は、プログラミングの知識がなくても簡単に設定でき、ウェブブラウザ上で情報を共有・活用することができる。Excelなどで作成したファイルと異なり、「POWER EGG2.0」上で一括管理するので、IT資産の統制管理もできるのが特徴だ。
ディサークルの2011年度(12年3月期)上期は、競合他社が製品の機能を強化してきた影響で、受注までの商談が長期化した。西岡社長は「競争は激しさを増しているが、受注は堅調で、新しい商談の発掘も活性化している」と、このところ強化しているIBMの「Notes」移行に関する商談や同社ソフトの旧バージョンからの移行が堅調であることをアピールする。だが、一方で国際財務報告基準(IFRS)の適用延期によるリプレース需要などが停滞し、クラウド・サービスに関する商談でも値崩れで苦戦を強いられていた。とくに「販売パートナーの利益率が悪化した」(同)ために、新製品や新オプションなどを投入し、製品面や支援策でバックアップ体制を強化した。
機能面では、Web DBを新機能として搭載したことで競争力の強化を狙う。メイン商談となっている「Notes」入れ替えの商談では、Notes独特のつくり込まれたDBを移行する受け皿としてWeb DBを活用することができる。従来、NotesのDBを移行する際はアドオン開発が必要だったことからすれば、販売パートナーの開発工数を減らすことができる。また、サイボウズの「デヂエ」やドリーム・アーツの「Insuite Sm@rtDB」などが競合する商談では、価格や機能面で差異化できる。西岡社長は、「表計算ソフトを駆使している業務へのリスクも高まっている」という。こうした「No Excel」の流れに対応するためにも、Web DBを搭載した「POWER EGG2.0」はファイルを一括管理できるので、競合に勝つ材料になる。
クラウドと企業内連携も強化
「POWER EGG2.0 Ver2.3」は、クラウドに関する商談に応える機能も拡張している。具体的には、クラウド環境と企業内システム間の連携を強化するため、ワークフローエンジンとウェブサービスのAPIを提供したほか、SAML(認証情報を表現するXML仕様)認証への対応や、価格競争力を高めるために、無償のアプリケーションサーバー「Glass Fish」の採用、クラウド版の標準価格を半額にするなどの対策を打った。同社は、「POWER EGG」の機能強化を従来よりも迅速に行う。今年中にはCRM(顧客情報管理)などの機能をアップデートする計画だ。
一方、北國銀行(石川県の地銀)に「POWER EGG」が導入され、このほど本稼働して効果が明確に現れた。その成果を前面に出して、地銀や信金などの開拓に本腰を入れる。現在、金融機関向けに実績のあるインテックや富士通マーケティング、日立システムズ、キヤノンITソリューションズなどと協業し、「Notesリプレース」をキーワードに販売を強化している。西岡社長は、「現在、金融機関の手元案件だけで10行以上ある」と、大型案件の獲得に自信をみせている。
同社の業績は非公表だが、11年度下期は、計画値に対して下方修正を強いられた。だが、昨年末から次々に打ち出した新施策により、競合激化する国内グループウェア市場でどこまでシェアを獲得できるか注目される。