「白川茶」の生産地として知られる岐阜県白川町(今井良博町長)では、高齢化が急速に進んでいる。同町は、65歳以上の独居世帯に向けた福祉サービスを強化するため、2011年末、NECのAndroidタブレット「LifeTouch(ライフタッチ)」を活用した見守りシステムを導入。今年1月に、アンケート配信やテレビ電話で高齢者の健康状況を把握・管理するサービスを開始した。
岐阜県白川町
概要:岐阜県加茂郡に所在する町。面積はおよそ238km2で、人口は9271人(2012年1月1日現在)。人口のうち、65歳以上の高齢世帯は約30%を占めている。特産物は日本茶、竹細工など。
プロダクト提供会社:NEC/NECネッツエスアイ
プロダクト名:「LifeTouch」とネットワークシステム
「LifeTouch」を活用した見守りシステム

(左から)NEC営業担当の森本康聖氏、白川町役場まちづくり推進グループの長尾茂気氏、白川町保健福祉課福祉グループの田口充則主任
今年1月から白川町が稼働を開始したシステムは、タッチ操作対応の7インチ画面をもつAndroidタブレット「LifeTouch」と通信ネットワークを軸とするものだ。65歳以上の独居世帯へのアンケート配信とテレビ電話の機能を備え、タブレットを活用して高齢者の安否確認や見守りを行う。タブレットなどをNECが提供し、アプリケーション開発は、グループ会社のNECネッツエスアイが担当した。
白川町は、65歳以上の独居世帯が人口の約10%を占める。今後、一人で暮らす高齢者の数がさらに増えるとみており、独居の高齢世帯を対象とする福祉サービスに急ピッチで取り組んでいる。同町は、2010年に光ファイバーの高速通信インフラを町内に整えて、昨年、インフラの利活用の一環として福祉システムの導入の検討を始めた。システムの選定にあたって、白川町役場経営管理課まちづくり推進グループの長尾茂気氏は、「センサなどを使ってお年寄りを監視するのではなく、お年寄りに自ら情報を発信してもらうことを重視した」と述べる。ITの初心者でも使いやすいタブレットを利用し、町役場と高齢世帯の間で簡単に情報交換ができることを評価して、NECグループのソリューションの導入を決定した。

画面をタッチするだけで自分の体調を伝えることができる
システムはこんなふうに使われている。毎朝7時頃、白川町の保健福祉課のスタッフは、高齢者の自宅に置いた「LifeTouch」端末に「今日も、体調は良好ですか?」という質問を配信する。高齢者は、「はい」「いいえ」「どちらでもない」のいずれかのボタンを押して回答することによって、保健福祉課に体調を伝える。回答がなかったり、「いいえ」の回答だった場合は、保健福祉課のスタッフが本人に電話をかけたり、近所に住んでいる見守り担当ボランティアが様子を見に行く、という仕組みだ。保健福祉課福祉グループの田口充則主任は、「このシステムを使って、地方ならではの“昔の見守り”ができるようになった」と、導入の成果を語る。
NECにとって、地方自治体に「LifeTouch」を核とするシステムを納入するのは初のケースで、今後の横展開に向けたトライアルでもある。NEC営業担当の森本康聖氏は、「導入のプロセスで、白川町のニーズをきめ細かく聞き取り、それを製品開発に反映した」という。例えば、ボタンを大きくしたり、わかりやすい顔文字を使ってほしいなどの要望を受けて、「LifeTouch」の主なターゲットである一般企業のニーズとは大きく異なるシステムを実現した。白川町には、秋田県など全国の地方自治体や事業者からシステムについての問い合わせが殺到しており、タブレットを活用した見守りシステムの導入は今後、全国各地に広がりそうだ。
白川町の「LifeTouch」の利用世帯は、現時点でおよそ20世帯。今年中に、その数を35~50世帯ほどに増やす方針だ。さらに、「高齢者の買物支援や、都会に住んでいる子どもとのコミュニケーションを実現するために、『LifeTouch』を使ったシステムのさらなる活用を検討している」(長尾氏)ところだという。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
・高齢者が気軽に健康について相談ができること
・監視ではなく、高齢者が自ら情報を伝えること
・地域のコミュニティ力の向上につながること