日本ヒューレット・パッカード(日本HP、小出伸一社長)は、3月29日、x86サーバーの新製品「HP ProLiant サーバー Generation 8」6機種を発表した。サーバーの導入・運用を支援する無償サービスを付加したことが特徴で、謳い文句は“自働化サーバー”。日本HPの幹部は、「パートナーの評価は高い」と、新機種に自信のほどをみせる。その価値とはどれほどのものか。日本HPが今回売りにしたポイントと、販社であるSCSKと大塚商会の評価を取材した。(取材・文/木村剛士)
日本HP
「スペックではない価値を提案」
インテルが3月7日に最新のプロセッサを発表したことに合わせて、主要なコンピュータメーカーは、x86サーバーの新機種を続々と発表した。日本HPもその1社で、3月29日に記者会見を開き、6機種を披露した。日本HPが新機種で売りにしたのは、スペックではない。処理性能が向上し、消費電力も抑えられているが、会見ではスペックについてはほとんど語っていない。アピールしたのは、サーバーの導入と運用業務に関わるユーザーとパートナーの負担を減らす新技術と、それを活用した無償サービスを加えたことだった。エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括の杉原博茂執行役員は、「サーバーの導入・運用業務の負担を極限まで減らした」と言い、インダストリースタンダードサーバー製品本部の橘一徳本部長は、サーバーが自ら働く(導入と運用作業をサーバーが行う)という意味で、“自働化サーバー”というキャッチフレーズをつけた。

新機種を記者会見で披露した日本HPの杉原博茂執行役員
その具体例として、第4世代の「iLO」というモジュールがある。iLOは、OSとファームウェア、ドライバのインストールを自動化する機能をもち、ハードの稼働状況を常時監視する。そして、CPUやメモリ、HDDのエラー情報など、1600項目のログを最大で450日間自動記録。これらの情報を、ユーザーとパートナーに無償のウェブ管理ポータル「HP Insight Online」で提供する。障害が発生した場合やその予兆が現れた場合には、日本HPのスタッフが通報・対策を施すサービスも用意した。
橘本部長は、新機種が販売会社に与えるメリットについて「われわれのツールとサービスに販売店の知恵と価値を加えれば、新たなビジネスを生み出すことができるし、サービス品質も高めることができる」と自信満々だ。では、パートナーはどうみているのか。SCSKと大塚商会に取材した。

SCSK
「差異化ポイントになる」
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SCSK 國府田明弘部長 |
SCSKは、CSKと日本HPの有力パートナーだった住商情報システム(SCS)が合併して生まれたSIer。それだけに、日本HP製品の販売ボリュームが、他社製品に比べて突出している。全x86サーバーのうち、日本HP製品が占める比率は50~60%もある。
國府田明弘・SCSカンパニープラットフォームソリューション事業部門エンジニアリングサービス部部長は、日本HPとの協業内容について「当社と日本HPのスタッフで、週に1回は定例ミーティング、月に1回は技術勉強会を開いている。10年ほど前からは、地方都市で情報交換会を1年間に3回は開催している。われわれのオフィスには、日本HPのスタッフが使う専用ルームがあり、常に密な連携を取っている」と説明している。日本HPは、SCSKをかなり手厚くサポートしていることがうかがえる。
今回の新機種について國府田部長は、「x86サーバーは、どのメーカー製品でも違いはほとんどなくなっていて、SIerとしては独自サービスをどう付加するかがポイントになる。ラインアップが豊富なことが日本HPの強みだが、今回の運用を支援する仕組みは、他社との差異化点になる」と歓迎している。また、「強いて挙げれば、新製品の情報をもう少し早い時期に欲しいが、支援内容に不満はない。つき合いが長いだけに、安心して販売に専念できる」。SCSKは、日本HP製品以外にデルや日本IBM、NEC製品を販売するが、日本HPとの関係はかなり強固だ。
大塚商会
「SMBにメリットあり」
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大塚商会 中本明彦次長 |
大塚商会の中本明彦・マーケティング本部プロダクトプロモーション部サーバ・ストレージ課次長の評価は、「『Generation 7』(前モデル)が出た時よりも、今回のほうが、前モデルからのバージョンアップ度合いは大きいと感じている」というものだった。導入・運用支援ツール・サービスについては、「中堅・中小企業(SMB)などのユーザーが、メリットを感じるポイントになるだろう。われわれも、独自サービスを加えて新たなメニューを考えられそうだ」と話している。
大塚商会は、自社で販売するx86サーバーでメーカーごとの販売比率を公表しないので、日本HP製品をどれほど重視しているかはわからない。各メーカーの支援体制についても多くを語らない中本次長だが、日本HPの支援体制について「他のメーカーよりもスタッフは少ないが、コンパクトに効率よくサポートしてくれている」と話しており、一定の評価はしている。
日本HPに対する要望については、「問い合わせがあった際に、スムーズに回答が得られるように、かなり高度な要求をしている」と話す。そして、「当社がx86サーバーのメーカーに求める最重要項目は品質。壊れない商品を安定供給してくれることが、われわれにとっては一番ありがたい」と要望を語る。評価については慎重に言葉を選んだものの、少なくともマイナス評価が中本次長の口から発せられることはなく、新機種への期待がうかがえた。