システム運用システムのビーエスピー(BSP、竹藤浩樹社長)とデータ・システム連携のビーコンインフォメーションテクノロジー(ビーコンIT、坂本桂一社長)のユーザー企業で構成する「Beaconユーザ会」(坪井祐司会長=LIXIL上席執行役員企画管理本部長)は、若手IT技術者を育成する場としての役割を果たしている。毎年、滋賀県大津市で開催する年次イベント「Beaconユーザシンポジウム」では、各地区の若手を中心とした研究グループが「完成させるプロジェクト」(坂本社長)に取り組んだ成果を発表する総仕上げの機会になっている。(取材・文/谷畑良胤)
優秀事例賞に長野市民病院 今回のシンポジウムは、2日間のスケジュールで開催し、過去最大の226社、690人が参加した。初日は、BSPとビーコンITの両社長が自社プロダクトと戦略をプレゼンテーションした後、両社の製品・サービスに限らず、他社のプロダクトを使ったユーザー事例がそれぞれ5社から発表された。
発表したユーザー企業は、WOWOWやニッセイ情報テクノロジー、ミズノ、岡村製作所、月島機械、紀伊國屋書店など、いずれも中堅・大手企業だ。BSPの竹藤社長は「当社とビーコンITの製品・サービスにこだわらず、ユーザー企業が抱える課題の解決策をどう実現したかが発表された」というように、BSPとビーコンITのユーザー会でありながらも、直近の課題をユーザー企業同士で共有する機会になっている。
シンポジウムでは、このユーザー事例に関しても、賞を授与している。今回、「優秀事例発表賞」に選ばれたのは、長野市民病院が発表したテーマ「知ってますか『電子カルテ』? 診療室で先生は何を入力しているの?」だ。長野市民病院は、ビーコンITが提供する業務で使う形式の異なるデータを必要な形式にノンプログラミングで変換する国産ETL(データ抽出、変換・加工、ロード)ツール「Waha!Transformer」とウイングアークテクノロジーズのBI(ビジネス・インテリジェンス)「Dr.Sum EA」を利用した電子カルテデータの「見える化」を図った取り組みを発表し、高い評価を得た。
多彩な研究を披露 二日目は、イベントのメインとなる研究発表が行われた。若手IT技術者の代表者による発表では、各地区37グループから34グループが40分間ずつ1年間の研究内容をプレゼンテーションした。この研究にも、賞が与えられ、今回「最優秀活動賞」を受賞したのは、東日本情報活用研究会の「HTML5の可能性」と題した研究だった。
この研究は、HTML5を使うことでウェブサイトはどう変わり、将来はどうなるのか、ということについて実際に実装して検証した。若手IT技術者が実際にものづくりを行い、自身が解き明かした新しいウェブの世界を披露した。
実質的に第2位となる研究は、「優秀活動賞」として、「IT部門の事業継続化計画立案への活用」(東日本システム運用研究会)、「ヒューマンエラー防止術」(西日本システム運用研究会)、「ソーシャルメディアを使え!」(東日本情報活用研究会)と題した3研究が受賞した。
このうち、ソーシャルメディア(SNS)で何ができるのかを研究した20代中心の若手IT技術者で構成する東日本情報活用研究会の取り組みは、SNSを使ったユーザー企業の「マーケティング革命を起こす」ことを目指し、知識の吸収と実際に検証までを行ったことが評価された。「Beaconユーザ会」の坪井会長は「研究会によっては、各担当者が分業で取り組みすぎ、内容が散漫になっているものもある」と、手厳しいが、全体としては満足度の高い研究が集まったと評価している。

「Beaconユーザ会」を支える(左から)ビーコンITの坂本桂一社長、ユーザ会会長であるLIXILの坪井祐司・上席執行役員、BSPの竹藤浩樹社長
研究発表のあとは、基調講演として日本女子プロゴルフ協会(LPGA)会長の小林浩美氏の講演と、ソニー生命保険のCIO(最高情報責任者)である嶋岡正充・取締役執行役員専務がIT部門経営に関して話したCIOセッション、ソニックガーデンの倉貫義人・社長CEOが受託ソフト開発の未来について語ったフロンティアズセッションが行われた。
来年は、「Beaconユーザ会」が記念の30回を迎える。坪井会長は「記念イベントでは、700人の集客を目指す」と意気込みを示し、これまで以上に趣向を凝らして、若手IT技術者を多く集める考えだ。

「Beaconユーザシンポジウム」の最後に開かれたパーティーではタレントのモト冬樹氏がライブ公演し、事前に知らされていなかった参加者一同が驚きの声をあげた