世界のネットワーク関連製品メーカーが集結してネットワーク業界の課題について議論する「NetEvents 2012 APAC Press Summit」が4月25~26日の2日間、香港で開催された。参加企業が議論を交わすなかで、「ユーザー企業にとって最適なシステムとネットワークは何か」ということを改めてテーマとして掲げた。例えば、ネットワークとコンピュータの業界それぞれで大手メーカーがサーバーとストレージ、ネットワークを統合したアプライアンスを提供する動きが相次いでいる。1社単独で完結する製品・システムの提供の仕方はユーザーにとって最適なのか。「NetEvents」の議論にヒントを探った。(取材・文/佐相彰彦)
アライアンス強化がカギ マルチベンダー擁護派が多数
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米HP マーク・ピアソン チーフテクノロジスト |
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NEC 岩田淳・所長代理 |
「NetEvents」の参加企業は、ヒューレット・パッカード(HP)やデルなどネットワークの主要機器であるスイッチやルータを提供する大手メーカーだ。ネットワーク業界トップのシスコシステムズは参加しなかったものの、世界の主要メーカーが集まり、その多くが「マルチベンダー化」をビジネス拡大のポイントとして、アライアンスを強化することの重要性をアピールしていた。
米HPのネットワーキング部門でデータセンター(DC)関連ビジネスを担当するマーク・ピアソン・チーフテクノロジストは、「当社は、OpenFlowの技術で常にリーダーシップをとってきている」と説明。「OpenFlow」は、ネットワーク標準化規格として注目を集めており、HPは他社よりも先行して取り組んでいる。最近は、OpenFlow対応のスイッチも発売している。また、「テンプレート」でアプリケーション配信の最適化を追求したネットワーク仮想化の仕組み「Virtual Application Networks(VAN)」を発表。ピアソン氏は、「OpenFlow対応のスイッチとVANによって、クラウド時代のネットワークのあり方を提供できる」と自信をみせている。また、HPアジアパシフィックのアモール・ミトラ・バイスプレジデントは、「とくに日本では、システムインテグレータなど販売パートナーが売りやすい環境を整えることが重要となる。そういった点で、標準化のOpenFlowに対応した製品は適している」とし、「さまざまな製品・サービスを組み合わせてインテグレーションを手がける販売パートナーにとっては、マルチベンダー化が実現できる製品を提供しなければならない」とみている。
マルチベンダー化については、フォーステンネットワークを買収した米デルも、「オープン化の推進こそが、フォーステンブランドの製品を拡販することにつながる」と、アジアパシフィックと日本を担当するマク・チンワー・ネットワーキングセールス・コマーシャルビジネスディレクターは語る。
両社とも、サーバーとストレージを提供しているものの、1社で統合製品を開発するよりは、他社製品を含めて各製品の特性を生かすことがユーザー企業に最適なコンピュータ・ネットワークシステムを提供できると判断している。
標準化を進める「ONF」 NECはコントローラの販売へ
「マルチベンダー化」という点では、標準化団体「ONF(オープン・ネットワーキング・ファウンデーション)」も積極的に推進。この団体でも、HPが力を入れる「OpenFlow」をベースとした製品の普及を促進している。参加メンバーの1社であるNECの岩田淳・クラウドシステム研究所所長代理は、「標準化はユーザー企業にとっては一定のメリットをもたらす。一方、ベンダーにとっては差異化が図れない事態を招くことにもなる。いかに標準化をビジネスにつなげられるかがポイントになってくる」と指摘する。そういうNECでは、OpenFlowをベースとしたコントローラの開発を進めている。このコントローラがあれば、各種のネットワーク機器の接続、サーバーやストレージとの接続が容易になるという。ネットワーク側から標準化を進めたとしても、サーバーやストレージとの互換性も最適化できるかどうかわからないというネックの解消を狙っているのだ。
大手メーカーの間で、サーバーやストレージ、ネットワークを統合した製品の発売が相次いでいるのは、もともとネットワークメーカーが自社製品に独自OSを搭載し、コンピュータシステムとの接続で困難なケースもあったからだ。ただ、各製品の強みを組み合わせたほうがユーザー企業に最適なシステムを提供できるだけでなく、システムインテグレータもユーザー企業に適した独自のインテグレーションで差異化が図れる可能性が高くなるはず──「NetEvents」では、そのような趣旨のヒントが示された。

「NetEvents」では、さまざまな議論が交わされた