従業員の働き方に着目した企業コンサルティングなどを手がけるワーク・ライフバランス(小室淑恵社長)は、サイボウズが提供する業務アプリケーション構築PaaS「kintone」の導入を決めた。2011年11月にベータ版の利用を開始。正式版が稼働する現在、繁雑な作業を伴っていた顧客管理や対応漏れが起こっていた会員情報とのやりとりなどを効率化し、事業に役立てている。
ワーク・ライフバランス
会社概要:2006年7月設立。最適な働き方を目指す「ワーク・ライフ・バランス」に着目し、ワーク・ライフバランスコンサルティング事業や休業者の職場復帰支援事業、講演・研修事業などを手がける。
サービス提供会社:サイボウズ
プロダクト名:「kintone」
「kintone」上のアプリと設定可能なアクセス権
ワーク・ライフバランスは、コンサルティングや講演・研修などの事業を手がけている。顧客ごとに担当コンサルタントを配置し、セミナーの受講者には担当メンターが付くようにしている。
従来の悩みは、多くの企業が抱えている性質のものと同じだった。コンサルタントがそれぞれの顧客情報をMicrosoft Excelファイルで管理。フォーマットが異なる、情報が重複しているなど、乱立したExcelファイルが社内における正確な情報共有に支障をきたしていた。
そんな状況にあって、ひょんなことからサイボウズが提供する業務アプリケーション構築PaaS「kintone」の存在を知る機会があった。サイボウズの青野慶久社長が、ワーク・ライフバランスの小室社長に直接紹介したのだ。松久晃士ワーク・ライフバランスコンサルタントは、「当初は、操作や設定が難しいイメージをもっていたが、実際には使いやすくて魅力的に感じた」と話す。評価したのは、フォームの作成が容易で、アクセス権限や公開設定が細かくできることなどだった。
導入に至るまでの経緯は少し変わっている。情報システム担当者がいないワーク・ライフバランスでは、部署を横断して従業員全員がサービスの選定に携わった。複数業務をこなせる人材を目指すジョブローテーションの仕組みを採用しているので、人事や経理、経営企画、情報システムに関わる各従業員が互いに意見を出し合い、議論を深めることができた。そこで挙がった声が、顧客情報の一元管理やサービス案内の効率化だった。
全社一丸となり、「kintone」上で構築した重要なアプリの一つが顧客管理リストだ。企業名や担当者名などの基本情報に加えて、顧客へのアプローチ履歴や提出物の納期管理ができるように設計した。コンサルティングや研修プログラム、セミナーなどのサービスごとにフィールドを作成し、細かいステータスを管理している。レコードのコメント機能を活用し、メールの内容や担当者の所感なども盛り込んで、顧客情報の充実を図っている。
研修を受講する会員向けに、ワーク・ライフ・バランスに関する情報やサービスを提供する会員情報サイトも、「kintone」の用途で中核を成すアプリだ。会員とともに、受講中に自身のプロフィールレコードを作成。受講生の課題提出やコンサルタントとの質疑管理に活用している。
受講生とのやりとりは「kintone」ですべて一元管理し、メンターは受講生からの問い合わせメールを見逃したり、問い合わせ履歴をExcelで管理したりすることがなくなった。受講生は、自身が投稿した質問とその回答をいつでも確認できるようになった。松久コンサルタントは、「受講生からの問い合わせに対して誰がフィードバックしていないかが一目瞭然。気づいたメンターは、メールのように長い前置きをせずに、質問に対して必要なことだけをコメント欄に書き込めばよい」と利点を説明する。
アプリ/フィールド/レコード単位で、組織/グループ/ユーザー単位に処理の種類に応じたアクセス権を設定し、従業員と会員では見えるアプリが異なるように設定している。
「kintone」アプリを最大限に使いこなすために実施している取り組みが興味深い。習熟度別に1級から3級までを設け、全社で共有することで、従業員の向上心を煽っている。楽しみながら「kintone」を勉強できるように心がけているという。(信澤健太)
3つのpoint
・容易にアプリを作成できる
・習熟に時間がかからない
・属人化した社内業務を改善