フォースメディア(池田譲治社長)とラネクシー(二瓶孝二社長)は、情報漏えい対策ソリューションで業務提携した。フォースメディアのセキュリティUSBメモリ「Lock USBメモリ」と、ラネクシーのデバイス制御ソフト「DeviceLock」を連携させ、他の類似ソリューションよりも強固な対策を容易に構築できるようにした。「唯一無二のソリューション」と両社が胸を張る協業製品の中身をみる。(取材・文/木村剛士)
普及の裏に潜む問題
USBメモリからの情報漏えい
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フォースメディア 池田譲治 社長 |
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ラネクシー 石田人士 部長 |
USBメモリは、簡単に利用することができ、大容量化・低価格化が進んで、広く利用される外部ストレージになった。その一方で問題になっているのが、USBメモリを通じた情報漏えいである。従業員が企業内にある個人情報・機密情報データをUSBメモリにコピーして、外部にデータを持ち出した際に、紛失や盗難などに遭って結果として情報漏えいにつながってしまう事故は少なくない。安価に手に入り、簡単に利用できるデバイスだけに、情報が漏れるリスクを抱えているのだ。
デバイスメーカーはユーザー企業の課題を解決するために、セキュリティ機能をもつUSBメモリを開発しているし、セキュリティソフトメーカーは情報漏えい対策ツールとしてデバイス制御ソフトを開発している。今回のフォースメディアの「Lock USBメモリ」と、ラネクシーの「DeviceLock」の連携ソリューションも、このカテゴリに位置づけられる製品で、類似製品は多い。だが、「両製品が連携することで、他社にはない唯一のソリューションになる」と、フォースメディアの池田社長は胸を張る。その根拠をみてみる。
ラネクシーの「DeviceLock」は、USBメモリや外付けハードディスクドライブ(HDD)、CD/DVDなどの外部ストレージの利用を制限するソフトである。「読み込みは可能、書き込みは禁止」などの細かな設定を、ユーザーやデバイスごとに行うことができる柔軟さと、さまざまなメーカーのデバイスでも不具合が起きない品質の高さを強みにしている。ラネクシーは9年前から取り扱っており、累計で40万ライセンスを販売。「昨年度下期は前年同期比で約50%増で伸びた」(ラネクシーの石田人士・第1ソフトウェア事業本部営業部部長)。さまざまなジャンルのソフトを取り扱うラネクシーの主力製品の一つに成長した。
導入負担が少ない
セキュリティUSBメモリ
一方、フォースメディアのセキュリティUSBメモリ「Lock USBメモリ」は、USBメモリにデータを保存した時点で、「AES256」形式の暗号化が行われ、パスワードを入力しないとUSBメモリを使うことができない製品。パスワードを事前設定した回数で間違えると、USBメモリ自体がフォーマットされる。この機能だけをみれば、同等の製品はあるが、「Lock USBメモリ」には「他社にない稀有な特徴がある」(池田社長)という。
情報システム担当者が、デバイス制御ソフトで利用できるUSBメモリを設定する場合、USBメモリがもつデバイスID、詳しくはメーカー名(ベンダーID)と製品型番(プロダクトID)とシリアルナンバー(デバイスに付与された固有のシリアル番号)をデバイス制御ソフトで登録することになる。
これら数十桁におよぶデバイスIDを個別識別情報として、使用を許可したUSBメモリか否かを判別する仕組みが一般的だ。ただ、USBメモリごとに付与されるシリアルナンバーを一つひとつ登録するのは、かなりの手間を要する。この作業が情報システム担当者の手を煩わせている。
「Lock USBメモリ」では、このデバイスIDのうち、プロダクトIDをユーザー企業ごとに指定できるサービスを行っている。プロダクトIDの仕様は、A~Fの大文字と0~9の16文字の英数字から選択した4ケタの文字列で構成することになっている。その文字列をユーザー企業が任意に指定することができるようにした。プロダクトIDの文字列の組み合わせは、16の4乗となり、同じプロダクトIDを使用することはほぼあり得ないので、ユーザー企業独自のプロダクトIDをもつUSBメモリになる仕組みだ。

「Lock USBメモリ」(写真は8GBモデル。税抜価格は1万2800円)。
メモリ大手のキングストンテクノロジー製で品質は折り紙つきだ
このプロダクトIDをデバイス制御ソフトに入力するだけで、シリアルナンバーを一つひとつ登録する手間を省いて制御できるようになる。デバイス制御ソフト「DeviceLock」と「Lock USBメモリ」を組み合わせることによって、「Lock USBメモリ」以外のUSBメモリは利用が不可能になるので、セキュリティの強度も保つことができるというわけだ。「導入のしやすさと高いセキュリティ強度を両立している」(池田社長)というのもうなずける。さらには、「ユーザー企業独自のプロダクトIDをもつことができるUSBメモリは、『Lock USBメモリ』以外にない」と、池田社長は希少価値の高さも訴えている。
ビジネス上でUSBメモリを利用するケースは多いものの、利用を制御しているユーザー企業は少数だ。「大手企業でも野放し状態(利用制限をかけていない)になっているケースが散見される」(ラネクシーの海老澤仁・第1ソフトウェア事業本部営業部営業2G主任)という。
USBメモリによる情報漏えい事故は後を絶たず、ユーザー企業の悩みの種という状況は今後も続きそうだ。ITベンダーにとっては、ビジネスチャンスになる。フォースメディアとラネクシーは、互いの強みを融合させた唯一のソリューションで、拡大余地が大きいマーケットに攻め入ろうと協業関係を強めている。