BCN(奥田喜久男社長)は、デジタルサイネージをテーマにしたセミナー「SIerのためのビジネス講座Vol.2」を、6月13日に開催した。海外に比べて、まだ発展途上にある日本市場の課題や、デジタルサイネージ導入における懸念事項、さらに最新のデジタルサイネージソリューションを詳説するセッションを行った。セミナーにはSIerやIT関連製品販社の関係者など約50人が参加し、関心の高さがうかがわれた。(取材・文/大山貴弘、写真/横関一浩)
マーケティング視点に立ったデジタルサイネージを
 |
デジタルメディア コンサルタント 江口靖二 氏 |
 |
インテル 津乗学 マネージャー |
セミナー冒頭の基調講演では、デジタルサイネージコンソーシアムの常務理事を務めるデジタルメディアコンサルタントの江口靖二氏が登壇。メディアコミュニケーションの視点から、現状のデジタルサイネージの課題を指摘し、その特性を分析しながら、「デジタルサイネージありきではなく、マーケティング視点に立ったコミュニケーション提案が不可欠」と説いた。また、「目先の利益だけを追求した“墓石サイネージ”は、結果的にデジタルサイネージ市場を萎縮させる」と警鐘を鳴らした。
江口氏の講演に続いて、デジタルサイネージ関連のビジネスを展開する先進企業によるセッションに入った。最初に登壇したインテルのクラウド・コンピューティング事業本部 エンベデッド/CE事業開発部の津乗学プロダクト・マーケティング・マネージャーは、インターネットにつながっているデバイスが2015年までに150億台になることで、2020年には35兆ギガバイトのデータがやり取りされる「インテリジェント・システムの時代」の到来を予見した。またデジタルサイネージは「単なる表示機器ではなく、コンピューティング・デバイスである」として、「Intelligent」「Connected」「Transforming」の三つが重要なキーワードになると指摘した。そのうえで、セキュリティ対策やTCO削減に優位性の高いインテル・アーキテクチャについて説明した。
SIerの提案力が事業の成否を握る
 |
SCALA ギヨム・プル 社長 |
 |
日本マイクロソフト 宮本裕一 アカウント エグゼクティブ |
 |
リコー 原田尚 リーダー |
 |
岡谷エレクトロニクス 高橋一夫 課長 |
続くセッションでは、デジタルサイネージに特化したソフトウェアを25年以上にわたって制作・販売しているSCALAのギヨム・プル社長が登場し、「世界のデジタルサイネージ市場は毎年20%も成長している」としながらも、普及が進まない日本市場の現状を指摘した。そのうえで、デジタルサイネージ事業の利益率を高める方法として、「運用の自動化」「インストールコストの低減」「ホスティングのクラウド化」「コンテンツの自動化」の四つを挙げ、デジタルサイネージを提案するSIerのコンサルティングの重要性を語った。
日本マイクロソフトのOEM統括本部 エンベデッド本部の宮本裕一アカウントエグゼクティブは、マイクロソフトが提唱している組み込みデバイスのシステム化のモデルである「Intelligent Systems」について説明した。デジタルサイネージ上でやり取りされるデータを軸に、ユーザーへ付加価値を提供する必要があると語った。そのうえで、Intelligent Systemsのプラットフォームとなる組み込み機器を対象としたOS「Windows Embedded」ファミリーのアドバンテージを紹介した。
最後のセッションは、リコーのネットワークアプライアンス事業部の原田尚ソリューション企画リーダー。リコーが新規事業としてデジタルサイネージに参入した経緯を語り、同社の超短焦点プロジェクターを使った200インチ超の大画面サイネージや、画像検索技術を用いたiPhoneアプリ「TAMAGO Clicker」のデモを行った。そして、顧客のプロモーション効果を最大化するコンテンツの重要性について語った。
締めくくりとして、各セッションに登壇した4人をパネリストとし、本紙の谷畑良胤編集長をモデレータにパネルディスカッションを実施。ディスカッションでは、デジタルサイネージのエコシステムの複雑さが課題として指摘され、標準化された技術の普及や、導入後の管理の必要性、さらにユーザーを驚かせるようなクリエイティブの重要性などをテーマに活発な意見が交わされた。
最後に、セミナーを共催した岡谷エレクトロニクスの第一営業本部ソフトウェア技術グループの高橋一夫課長がデジタルサイネージ市場拡大への期待を語り、3時間にわたるセミナーの幕を閉じた。