NTTデータ(岩本敏男社長)と沖電気工業(OKI、川崎秀一社長)は、2011年10月、グローバルITサービス分野で協業することを発表した。協業の第一弾として、NTTデータグループがマレーシアに展開するデータセンター(DC)を活用した「INERPIA/イナーピア SAPホスティングサービス」を採用し、世界120か国で事業を展開しているOKIグループのプリンタ事業部門のITコストを大幅に削減しようとしている。(取材・文/信澤健太)
地の利を生かし、サービスの質を高める
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OKIデータ
大堀和男部長 OKIグループは、2013年度に向けた中期経営計画における成長戦略として、プリンタ事業とクラウドサービス「EXaaS」を中心とするITサービス事業の強化、ATMなどのメカトロ製品の海外事業拡大を掲げた。グローバルレベルのITソリューションの提供に乗り出したNTTデータと手を組むことで、その実現に近づこうとしている。
第一弾として、2011年12月、OKIのプリンタ事業を担っているOKIデータ(平本隆夫社長)が、NTTデータグループの独itelligenceがもつマレーシアのDC経由で提供する「INERPIA/イナーピア SAPホスティングサービス」の活用に向けて検討を始めた。本稼働にこぎ着けたのは今年5月だ。2013年度(14年3月期)までに、日本やアジア圏各拠点におけるDC運用コストを2010年度比20%以上削減し、運用品質・効率の向上、事業継続性リスクの軽減を目指している。
従来は、IBM AS/400のハウジングサービスを利用し、OSやハードウェア、データセンターの運用などを複数のITベンダーに任せていた。これらをNTTデータに一元化し、Linuxプラットフォームを採用。複数の保守契約先と共に対応してきたインフラの課題や障害を、NTTデータが一手に引き受けている。日常的なアラート対応をNTTデータに移管したことで不定期な工数がなくなり、この分をSAPインフラに関しての企画・管理業務に振り分けることができるようになった。このほか、従量課金体系を採用したことで、データベース容量やユーザー登録数などに応じてコストを削減できる見込みだ。
OKIデータの大堀和男・経営情報部部長は、「ハウジングではリース期限を考慮して、設備投資や調達リードタイムを意識する必要があったが、今は使いたいときに使いたい分だけ設備を利用できる。ハードウェアを保有するのは、経営上の負担になる。インフラはITベンダーに任せたほうが、一定のサービスレベルが確保できて、メリットが大きい」と語る。
数値は非公開ではあるが、レスポンスやリカバリ時間などのSLA(サービス品質保証制度)は、OKIグループの要求に応えるものになっているし、24時間365日運用保守サービスを受けられる。itelligenceがマレーシアに展開するDCの電力設備は、二重電源であるうえ、自家発電装置も完備しているので、停電によるシステム停止の心配はないという。
NTTデータの独自資料によれば、他国と比べて、マレーシアは電力供給が安定しており、日本とのネットワーク接続性やコスト、災害の影響、政治などのカントリーリスクなどをみても不安な点が少ない。NTTデータの岡哲生・第四法人事業本部グローバルビジネスインテグレーション事業部営業統括部部長は、「有史以来、地震が発生していない」とマレーシアの特性を説明しながら、日本と同じ基準で運用しているDCの有用性を強調する。
OKIデータの大堀部長は、「プラットフォームの移行を通じてどのように業務が変わるのか、時間をかけてしっかり事前に確認する作業を進めた」と語る。苦労したのは、限られた時間での移行作業だった。「今年5月の連休中の3日間で、ネットワークを使わずにいかにマレーシアにデータをもって行き、稼働確認まで済ませるのか。リハーサルを重ね、作業時間を短くすることがポイントだった」と振り返った。