宮城県多賀城市の東北歴史博物館(今泉隆雄館長)は、2011年6月、情報システムの全面刷新をきっかけとして、データバックアップをテープからハードディスクを使用するRDXに変更し、アクロニス・ジャパンのバックアップ製品「Acronis Backup & Recovery Server for Windows」と「Acronis Backup & Recovery Server for Linux」を導入した。不具合が頻発していたテープをRDXに置き換えることによって、管理する資料のバックアップを強化した。
東北歴史博物館
会社概要:宮城県を中心とする東北地方の歴史に関する調査研究や展示企画、資料の保存や管理を行っている。1999年、宮城県多賀城市にオープン。1974年に開館した東北歴史資料館を前身としている。
プロダクト提供会社:アクロニス・ジャパン
プロダクト名:「Acronis Backup & Recovery」
東北歴史博物館のネットワーク構成

佐藤憲幸
主任研究員 1999年にオープンした東北歴史博物館は、東北地方の歴史や文化に関するあらゆる資料を取り扱っており、これらのデータが情報システムのトラブルなどによって失われないように、開館当時からテープによるバックアップシステムを用いてきた。しかし、ここ数年、頻繁に不具合が生じ、バックアップシステムが安定的に動作していなかったことから、2011年のシステム刷新を機に、バックアップをハードディスクを使用するRDXに置き替えることを決断した。システム刷新を担当した学芸部学芸班の佐藤憲幸主任研究員は、システムインテグレータ(SIer)3社に提案を依頼し、そのなかから、簡単な作業でバックアップと復元を実行することができるアクロニス・ジャパンの「Acronis Backup & Recovery」を活用するインフォコムの提案を選んだ。
東北歴史博物館は、新しいシステムでは、職員が展示やイベントについての情報を迅速にホームページで公開することができる仕組みづくりを目指して、昨年の6月にインフォコムと一緒にシステム構築に着手した。そして、3月11日に東日本大震災が発生した後、宮城県庁からバックアップの仕組みを強化する指示を受けたこともあって、とくに安定して動作するバックアップ製品を採用することを重視したという。佐藤主任研究員は、「万が一のとき、テープの不具合でバックアップが十分に取れておらず、データが失われてしまったら、展示品がどの時代のどのようなものかといった情報を失うことになる」と、きちんとしたバックアップが求められる歴史博物館ならではの事情を語る。「新しいシステムでは、バックアップの動作が安定していて、定期メンテナンス以外は管理作業を行う必要がない」と満足げだ。

東北歴史博物館は建物が堅牢。東日本大震災に遭ってもほとんど被害を受けなかった
東北歴史博物館は「Acronis Backup & Recovery」を活用し、以前は毎日行っていたバックアップの確認を、1週間1回程度に減らすこととした。同館は建物が堅牢で、海岸から離れた場所にあるので、東日本大震災による被害をほとんど受けなかったが、被害が大きかった県内の他の博物館と連携して、宮城県の文化財のレスキュー作業を行っている。職員は、他の博物館と共同会議を開いて、地震と津波で壊された文化財の修復に必要な情報やノウハウを共有し、従来の仕事に付加するかたちで震災の対応を進めている。佐藤主任研究員は、「バックアップの確認時間を短縮することによって、リソースを震災対応に回すことが可能になり、レスキュー作業に多くの時間を使うことができるようになった」という。
東北歴史博物館は、現在、震災などによって建物やIT機器が被害を受けた場合に備え、物理的に離れた場所でシステムのDR(災害復旧)サイトをつくることを計画中だ。セキュリティ性の高い県外のデータセンターを活用し、DRサイトの構築に取り組んでいこうとしている。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
・動作が安定し、確実にバックアップを取ることができる
・運用・管理の負荷を減らすことができた
・震災対応の作業時間を得た