2011年1月、日本マイクロソフトがパブリッククラウドサービスの「Microsoft Dynamics CRM Online 日本語版」の提供を開始してから1年半余りが経過した。オンプレミス型が主に大企業で導入が進む一方、Online版は中堅・中小企業(SMB)に支持される傾向が現れている。同社が掲げる事業目標に意欲的な姿勢がうかがえる。

中西智行
Dynamicsビジネス本部
本部長 パブリッククラウドサービス「Microsoft Dynamics CRM Online 日本語版」を製品ラインアップに加えた日本マイクロソフト。Outlookとの連携など、マイクロソフト製品との親和性の高さや廉価であることから、導入が進んでいる。ユーザー企業である岡谷エレクトロニクスの細井光宏・第一営業本部エンベデッド営業部マネージャーは、「機能はセールスフォース・ドットコムのほうが上だが、普段、Outlookを使っているので、Onlineを評価した」と話す。
日本マイクロソフトのパートナー企業であるシーイーシーの木村守宏・第一ソリューションサービス事業部ビジネスソリューション部部長は、「スタートアップ時はOnlineを利用し、成長とともにオンプレミス型に移行することもできる」として、オンプレミス型とクラウドの選択肢があるメリットを語る。
日本マイクロソフトの中西智行Dynamicsビジネス本部本部長は、「Dynamics CRM事業に通信簿をつけるとすれば、5点満点の4点だ。もっと可能性があると考えている。SMBへの提供は増えているが、まだ何もできていない小規模企業やSOHOにまですそ野を広げていきたい」と、CRM事業の好調さについて強調しつつ、SMB市場の深耕の重要性を語る。カギを握るのパートナー戦略では、既存パートナーはもちろん、「Office365」や「Windows Azure Platform」パートナーとの連携を模索しているという。
目標は挑戦的だ。CRM事業全体の数字として、2012年度(2013年度6月期)までに新規の売り上げではセールスフォース・ドットコムを上回るシナリオを描く。「来年には追い抜ける。現状は、ほぼ並んでいるという認識だ」(中西本部長)。
ただ、調査会社ガートナージャパンの川辺謙介・リサーチ部門顧客関係管理(CRM)アプリケーション主席アナリストは、「単価があまり高くないので、SAPやオラクル、セールスフォースに比べて金額ベースの伸びは小さい」という。
パートナー企業であるJBSソリューションズの内田健一・UxD事業部副事業部長は、「価格に柔軟性をもたせて欲しい。定価は安くても提供ベースでは他社に負けてしまう場合がある」と、販売現場からの要望を述べる。(信澤健太)