関西電力グループのシステムインテグレータ(SIer)である関電システムソリューションズ(田村和豊社長)は、業務コンサルティング事業を立ち上げ、これまで入り込めなかった関西地区の地方自治体の開拓に取り組んでいる。業務コンサルティングを通じて自治体とのパイプを太くし、中期的に、システム構築案件の獲得を狙うという戦略だ。ここ数か月、自治体向けコンサルティングの受注が増えており、今後、関西地場のパッケージベンダーと提携して自治体向けSI事業をものにする。
関電システムソリューションズは、ここ数年、主要事業である関電グループ向けシステム構築に加えて、グループ外向けのビジネス展開を強化している。ターゲット市場を広げることによって、売上高を2009年度の302億円から2011年度の380億円に伸ばし、関西地区の有力SIerとしてのポジションを固めてきた。
同社は、グループ外向けビジネスをさらに拡大させるために、民間企業に加えて、関西地区の地方自治体の開発案件の獲得を狙っている。地方自治体は、内部統制の強化のためにシステムを刷新するなど、SIの需要が高まっているとみて、自治体市場を開拓するために、今年前半に業務コンサルティングを手がける専門チームを立ち上げた。
地方自治体にシステム刷新のニーズがあるとはいえ、これまで自治体向けビジネスを展開してきた経験がなく、導入実績をもっていない関電システムソリューションズにとって、決して開拓しやすい市場ではない。そうした状況にあって、同社は、自治体に最初からシステム構築を提案するのは有効ではないと考えて、まずは業務コンサルティングを通じて自治体とのパイプづくりに取り組み、その実績を積み上げたうえで、システム構築案件の獲得を目指す、というやり方をとっている。
関電システムソリューションズは、およそ10人のエキスパートで組織するコンサルティングチームをつくり、システムの複雑化に伴ってIT管理が煩雑になっている自治体を対象に、CIO(最高情報責任者)補佐業務をはじめとするサービスを提供する。関西地区のSIerとしては珍しい業務コンサルティングを行うことによって、他のSIerとの差異を明確にするとともに、自治体との関係づくりを目指す。
同社は、コンサルティングチームのトップに自治体と深い関わりをもっている人物を配し、提案活動に力を入れている。そうした努力が実って、今年5月、大阪府吹田市から業務コンサルティングを初受託した。吹田市を皮切りに、これまでのおよそ5か月の間に、滋賀県大津市、奈良県大和高田市、奈良県大和郡山市をユーザーとして獲得。合計で4自治体で業務コンサルティングを行っている。さらに、進行中の案件も多く抱えており、これらに対応するために、コンサルタントチームの強化に取り組んでいる。
ソリューション事業本部事業企画グループのチーフマネージャーとしてコンサルティング事業の立ち上げに携わった池田孝氏は、「コンサルティング単体では収益率が低いが、当社のコア事業であるSIとのセットで案件を獲得すれば、売り上げに大きく貢献する」として、提案活動を加速化していく。
関電システムソリューションズは、自らは自治体向けシステム構築のノウハウを十分に備えていないと判断して、自治体のニーズに精通する関西地場のパッケージベンダーと提携するかたちで、自治体向けSI事業の展開を目指している。すでに、パートナー候補の数社と提携の話を進めており、協業に向けて動いているところだ。自治体市場を開拓する関電システムソリューションズの取り組みは、同社のみならず、関西地区の他のITベンダーにも商機を提供しようとしている。(ゼンフ ミシャ)