セントラル警備保障(CSP、鎌田伸一郎社長)は、法人向け監視カメラシステム「ポンカメシリーズ」で、京セラコミュニケーションシステム(KCCS、佐々木節夫社長)が提供する高速モバイル通信サービス「Pilina WiMAX」の固定IPサービスを採用した。2012年10月9日から、ユーザー企業向けにサービスを提供している。「ポンカメ」の利用料金を大幅に引き下げて事業を拡大。今後は、「Pilina WiMAX」を使った新事業も模索する。
ユーザー企業:セントラル警備保障
1966年3月10日に創業。常駐警備や機械警備、輸送警備などの警備事業に加え、監視カメラや情報セキュリティシステムの開発・販売も手がける。売上規模350億円強と、警備業界でトップ3以内に入る。
プロダクト提供会社:京セラコミュニケーションシステム
プロダクト名:「Pilina WiMAX」
【課題】もっとコストを抑えたい
CSPの「ポンカメシリーズ」は、撮影と録画を一体化した監視カメラシステムで、遠隔地から録画データを閲覧できることが売りだ。防犯カメラを設置するためにはケーブルを敷設しなければならないというこれまでの課題を解決し、Wi-FiとWiMAXによる無線通信でデータを保存できるようにしている。
手軽に導入できるので、さまざまな企業が利用している。加藤勉・営業本部事業推進部画像システム開発室長は、「コインパーキングや自動販売機、踏切、イベント会場などで利用されている。最近では、自治体や商店街などでも導入が進んでいる」と、ユーザー層が広がっていることをアピールする。
ケーブルを敷設するための工事が不要で低コストということからユーザー企業が拡大した「ポンカメ」だが、唯一の課題が残されていた。それは、WiMAXで固定IPアドレスを提供している事業者がいなかったことだ。「ポンカメ」にインターネット経由でアクセスするにはカメラ側のIPアドレスが判明していることが必要となる。そこで、WiMAX経由でVPNを利用していた。ただ、「コストが高くなってしまう」というネックがあった。月額の利用料金は約1万円。もちろん、ケーブルの設置工事と比べれば、格段に安いことは間違いないのだが、「ポンカメの普及を図るには、もっと手頃な料金で提供したい」という考えが加藤室長にはあった。そこで、WiMAXで固定IPアドレスを提供する事業者を探すことにしたのだ。

CSPの加藤勉室長(中央)と、KCCSの森丈志事業部長(左)、KCCSの宇佐見典昭氏
【決断と効果】利用料金を30~40%削減
WiMAXで固定IPアドレスを提供する事業者を探すために、加藤室長はある展示会を訪れた。今年春のことだった。そこで、見つけたのがKCCSの「Pilina WiMAX」である。展示会後も、「ホームページを閲覧して、すぐれている点を改めて認識した」という。そして、今年5月には導入する意向を固めた。
「Pilina WiMAX」は、KCCSが自社でWiMAXのネットワークを構築・運用しており、MVNO(仮想移動体通信事業者)向け回線卸サービス、M2M向け通信に適した固定IPサービス、セキュアな閉域ネットワークサービスを提供している。CSPの営業担当である、KCCSのICT営業本部NWソリューション営業部NWソリューション営業課の宇佐見典昭氏は、「先進的な監視カメラシステムである『ポンカメ』を最大限に生かす通信サービスとして『Pilina WiMAX』が適している」と実感したそうだ。
その後は、技術検証などを行って今年10月9日に本格稼働。導入を決断してから6か月が経過しないうちにサービスを開始した。加藤室長は、「サービス開始から1か月が経たない10月末の時点で10社余りの機器をリプレースした」と、順調ぶりに満足げだ。
一番のメリットは低価格で提供できることで、月額の利用料金を従来30~40%削減した。これがユーザー企業の増加要因となっている。
CSPは、今年度(12年3月期)に中期経営計画「CSPパワフル50計画」を策定しており、画像関連サービスを事業柱の一つに据えている。加藤室長は、「今後、『Pilina WiMAX』を使った新事業に着手することも模索したい」との考えを示している。KCCSの森丈志・ネットワークサービス事業本部ネットワーク事業推進室事業部長は、「CSPさんとパートナーシップを深めていく」と、両社でビジネスを拡大することを計画している。(佐相彰彦)
3つのpoint
低コストでのサービス提供を実現
ネット経由でカメラへのアクセスが可能
新しいネットワーク事業への着手を模索