和田光穂さんは、ストレージ製品を提供するイメーションの第一線で活躍する「エキスパート」として、システムインテグレータ(SIer)向けの営業活動を展開している。一日の訪問件数は最低でも3件。「ゴルフはやらない」「接待もほとんどしない」。いわゆる営業マンらしいことはやっていないと、苦笑いしながら語る和田さん。まさに現場での活動を重視する営業パーソンだ。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
[語る人]
●profile..........和田 光穂(わだ みつほ)
ソフトウェア開発などを手がける大手システムインテグレータで、営業を担当。1997年、ハードウェアの販売に携わりたいと考えて、イメーションに転職。メディカルイメージング事業部、OEM事業部、ソリューション事業部を経て、現在、スケーラブルストレージ製品営業部に籍を置いている。NASをはじめとするストレージ製品を、医療業界を得意領域とする販売パートナーに提案し、販売を促進する活動を展開している。
●会社概要.......... 記憶媒体やストレージシステムの製造・販売を手がける米Imation Corporationの日本法人。1996年に設立された。従業員数は163人。東京・神宮前に本社を構える。
●所属..........コマーシャル製品事業本部
スケーラブルストレージ
製品営業部
エキスパート
●営業実績.......... イメーションがNAS事業に参入する際に、発売前からNAS製品をある有力SIerに提案した。説得力のある提案が実を結んで、発売に合わせて大型案件の受注につながった。
●仕事.......... 法人向けのNAS(ネットワーク対応ストレージ)やRDXの営業を担当している。医療機関にソリューションを提供するシステムインテグレータ(SIer)を中心に、製品の提案活動を行う。機器を設置する際にSIerに同行することも多く、エンドユーザーに直に接して、ニーズをつかむことに力を入れている。
ひと工夫でお客様を喜ばせる
ゴルフ場や高級レストランで顧客を接待したりして時間を過ごすのは、自分の性に合っていない。私は、どんどん新規のお客様にアポイントメントを入れて、足を運ぶ。現場で製品を提案するときにこそ、営業としてのやり甲斐を感じている。失敗しても、私は切り替えが速いので、すぐにそれを忘れる。提案がうまくいかなかったときは、これまで以上にお客様を訪れるペースを上げて、改善に生かせる情報を吸収する。とはいっても、決して分析が得意なわけではない。会話のなかで、直感的にお客様の課題を拾い出して、解決の方法を見出していくのが自分のスタイルだ。
◆ ◆
私は現在、医療機関にソリューションを提供するSIerに、当社のNASやRDXを提案している。イメーションに入社したのは、15年ほど前だ。モノを売りたいと思って、この会社を選んだ。前職は、ソフトウェア開発を手がける会社での営業を担当していた。ソフトウェアは、当然ながら、お客様に見ていただくモノがない。当時の仕事は、提案活動というよりも、システムエンジニアの行動を管理する仕事がメインだった。
見せる商材がなく、人をコントロールするだけの毎日。ソフトウェアの営業は大切な仕事だと思うが、自分には合わないと感じた。そんなことから、ハードウェアメーカーへの転職を決心した。
イメーションに入った当初は、「レーザーイメージャ」の販売を担当させてもらった。レーザーイメージャというのは、プリンタのようなかたちの、病院でX線撮影に使う機器だ。こうして、ユニークな製品を提案する活動を通じて、モノを売ることの醍醐味を味わい、これこそが自分にぴったりの仕事だと実感した。しかし、ハードウェアの販売がおもしろいといっても、今の時代、各メーカーの製品は似通ってきている。モノだけでは差異化しにくくなっているのだ。そんな状況のなかで受注を勝ち取るには、自分自身が製品に“パーソナル的”な付加価値をつけることが大切だと考えていて、それを常に心がけている。
例えば、私は前職で、ネットワークの構成図を作成するノウハウを身につけた。それを生かして、病院を訪問してヒアリングするときに、イメーションのストレージを活用するネットワーク構成を描いた図を持参する。病院の先生たちは、技術に明るい人が多いので、ネットワークの仕組みが理解できる絵を見せると、とても喜んでくださる。他社の営業はあまりこういうことをしないと聞いているので、人間関係を築くためにも有効なやり方だと思っている。