データセンター(DC)事業者のさくらインターネット(田中邦裕社長)は、2011年11月、北海道石狩市に開設した「石狩DC」に、シュナイダーエレクトリックが提供するモジュール型UPS(無停電電源装置)「Symmetra PX 160kVA」12台を採用した。3か月間という短期間で導入し、迅速なサービス開始を実現している。
ユーザー企業:さくらインターネット
ハウジングやIaaSを提供するデータセンター(DC)事業者。1999年に設立された。大阪、東京、北海道・石狩で合計5か所のDC、総計2400基のラックを運営している。社員数は180人。本社は大阪市中央区。
プロダクト提供会社:シュナイダーエレクトリック
プロダクト名:モジュール型UPS「Symmetra PX 160kVA」
【課題】拡張性にすぐれたUPSが不可欠

さくらインターネット 基盤戦略部
ファシリティチーム
花清真リーダー さくらインターネットの石狩DCは、約5万m2の敷地面積をもつ大型データセンター。建物は分棟式を採用しており、最大8棟まで拡張することができる。1棟あたり最大500ラックを収納することが可能だ。さくらインターネットは、石狩DCに総建築費約32億円の巨費を投じて完成させ、ハウジングやIaaSなどのサービスを提供するための基盤として活用している。
石狩DCは、DCリソースをユーザー企業の需要に応じて段階的に増設することができるよう、サーバールームやUPSなどの電源設備をモジュール化する柔軟設計にこだわった。モジュール化によって、初期の設備投資や運用コストを抑え、稼働率の向上を図っている。さくらインターネットは、停電が発生した際にIT機器に数十分程度の間、電力を供給するためのUPSを選定するにあたって、モジュール設計に合わせて、柔軟に電源容量を増設することができる製品を求めていた。
さくらインターネットで基盤戦略部ファシリティチームのリーダーを務める花清真氏は、「いろいろなメーカーのUPS製品を検討したが、モジュール型のものがなく、なかなか当社のコンセプトに合致しなかった。石狩DCは、拡張性を重視した設計になっているので、UPSもフレキシブルに電源容量の増設ができるものでなければ意味がない。そうしたなかで、シュナイダーエレクトリックの『Symmetra PX』に着眼した。『Symmetra PX』はモジュール型で、段階的に電源容量を増やすことができる構成となっている。だから、石狩DCにぴったりだと判断し、導入を決定した」と、選定の理由を述べる。
「Symmetra PX」は、パワーモジュールやバッテリモジュールで構成しており、ラック内配置によって、省スペースを実現している。
【解決と効果】短期導入で迅速にサービス開始
さくらインターネットは、2011年11月に石狩DCを開設した。オープンに合わせて「Symmetra PX 160kVA」12台を導入し、加えて、モジュール型分電盤も16台入れた。花清リーダーは、「160kVAの容量を確保したモジュール型UPSの機種のなかで、『Symmetra PX』は他社製品と比べてサイズが半分以下。省スペース化して運用効率の向上を目指している当社にとって、小型のきょう体は最適」と、満足げだ。
同社は、「低価格」と「スピード」をキーワードに掲げ、石狩DCを基盤とするサービス展開に注力している。サービスを迅速に開始することができるよう、UPSをはじめとするDC設備を短時間で導入し、稼働させる必要がある。「Symmetra PX」は、受注生産するものではなく、通常のラインアップ製品。納期を短縮することができるわけだ。
花清リーダーは、「大容量のUPSは、注文した後に製造されることが多く、納品まで半年以上かかるのが普通なので、その分、サービス開始も遅くなる」と、受注生産の弱点を指摘する。「その点、『Symmetra PX』は、各省庁への届け出や仕様の検証といった作業に関してシュナイダーエレクトリックがサポートしてくれたこともあって、約3か月という短期間で導入することができた」(花清リーダー)そうだ。
さくらインターネットは石狩DCの第一期工事で、2棟を先行して建設している。今後、石狩DCを活用するサービスメニューを増やして、センターを徐々に拡張する構えだ。石狩DCの今後の増設にあたって、UPSの大容量化とバッテリ分離設置を課題としており、その課題を解決するために、「Symmetra PX」の進化に期待を寄せているという。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
段階的に増設することができる
小型なきょう体で省スペースを実現
短期間で導入することができた