【上海発】2012年11月29日、日本国内の有力なソフトベンダーが加盟するMade In Japan Software Consortium(MIJS、美濃和男理事長=エイジア社長)が、中国・上海市内にある花園飯店(オークラガーデンホテル上海)でプライベートイベント「MIJSカンファレンス in 上海 2012」を開催した。講演会を開いたほか、MIJS会員企業の製品・サービスを展示。カンファレンスには、上海周辺に拠点を構える日系のITベンダーやユーザー企業、MIJS海外展開委員会の会員など約100人が参加し、参加者全員がビジネスの場として魅力に感じている中国市場での可能性を見出そうとしていた。(取材・文/佐相彰彦)
この時期だからこそ開催
およそ100人の有志が集う

MIJSの美濃和男理事長
(エイジア社長) MIJSが開催する上海でのカンファレンスは今回で3回目。2010年に初めてカンファレンスを催し、3年連続で実施している。その前は、上海でワークショップを開設しており、MIJSが中国市場でビジネスを拡大しようとする姿勢を貫いていることを物語っている。
今年9月に日本政府の尖閣諸島国有化に抗議する中国の反日デモが激しくなり、日中間の関係に緊張が走ったが、そんななかでMIJSは「今こそ中国ビジネスを考える! Open Fantastic Global Meeting 2012」と題するセミナーを、会場は日本ではあるが10月に開催している。その際、今回のカンファレンス開催の可否が話題に上がった。海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突して日本と中国の外交問題に発展した2010年にも、上海開催の延期・中止なども検討したそうだ。しかし、いずれも会員企業などから「このような時期だからこそ、開催するべきではないか」という声が多かったという。そのため、今回のカンファレンスでは、MIJSの美濃理事が冒頭の挨拶で「政治問題はいろいろあっても、MIJSのメンバーをはじめとする多くの日本企業は、引き続いて中国を魅力ある国とみている」として、このような時期に上海で開催した意義を訴えた。

安篤ロジスティクス・デザイン
中原安篤代表取締役 また、講演後には懇親会を開催し、MIJS海外展開委員会の内野弘幸担当理事(ウイングアーク社長)が参加者に対して、「中国は好きですか」と問いかけて参加者全員が一致団結。「好きになることが中国を知ることになり、ビジネス拡大にもつながる」と述べた。海外展開委員会の内山雄輝委員長(WEIC社長)も乾杯の挨拶で中国でのビジネスの可能性をアピールした。
注目は日本の食品マネジメント
中国IT市場への参入方策も

NTT DATA(中国)
岡野寿彦董事 講演では、中国で注目を集める日本の食品マネジメントや、中国IT市場に参入する方策などを講演者が説明。基調講演では、安篤ロジスティクス・デザインの主席コンサルタントである中原安篤代表取締役が登壇し、「成長する中国経済のなかで脚光を浴びつつある『日本の食品マネジメント』と『物流品質管理』」と題して、注目を集める日本のマネジメントや管理手法をアピールした。中原代表取締役は、「カゴメは農家とともに野菜をつくることで、安心・安全にこだわっている」と例を挙げたほか、洋菓子の香月堂が現場から生まれた品質管理システムの導入で質の高い洋菓子を提供していることを解説した。中原代表取締役は、「このような徹底的な品質管理がブランド力を高めている」とみている。ITによる物流品質管理については、RFIDに代わる「カメレオンコード」を紹介。カメラで複数個を認識して低コストで導入することができる非接触型の画像解析技術の一つで、「RFIDに代わる技術として物流の現場から注目を浴びつつある。今後、中国で有効なツールとして導入が進むだろう」と評価した。

日本マイクロソフト
西脇資哲エバンジェリスト ゲスト講演では、NTT DATA(中国)の岡野寿彦董事・副総裁兼中国事業総経理が、「中国IT市場への参入方策(事例に基づく一考察)」と題して、「中国参入に必要な要素として、戦略とブランド力と実績を高めたうえで、初めて自社の強みや商品、サービス品質などの『コアコンポーネンツ』、パートナーリングなど市場での『ポジショニング』、現地で優秀な人材を確保する『人材・組織』が成立する」と指摘した。NTTデータも、(1)まずは中国の社会インフラの構築に協力、(2)オフショア開発の推進で優秀なパートナー企業を確保、(3)また日系・欧米系の重要顧客を中国でサポート、(4)自社ソリューションの中国国内への展開するというステップを踏んだ。これによって、中国ビジネスが軌道に乗ったという。

講演後は懇親会が開かれ、MIJSの内山雄輝・海外展開委員長(WEIC社長)が乾杯の音頭をとって中国でのビジネスの可能性を述べた 最後に、日本マイクロソフトの西脇資哲エバンジェリストが、「エバンジェリスト養成講座」と題してプレゼンテーションの極意を講演。「グローバルで活躍する中国人は、プレゼンが非常にうまい。一方、日本人はどうか」と問いかけ、ビジネスの場で自分の主張や意見を人にきちんと伝えることの重要性を説いた。
参加者は、それぞれの講演を熱心に聞き入っていた。今回の参加者が中国市場で新しい可能性を見出すことを期待したい。