国内の有力ソフトウェアベンダーが加盟する「Made In Japan Software Consortium」(MIJS、内野弘幸理事長)は、2月9日、今年度最後となる海外展開委員会の第3回「Fantastic Global Meeting」を開催した。企業の中国などへの展開や中堅・中小企業(SMB)の進出状況などを専門家や加盟企業から聞いた。

 冒頭、ノークリサーチの岩上由高シニアアナリストが「中堅・中小企業が考える海外ビジネス展開の現状とニーズ」と題して講演した。海外進出の割合について、年商50~100億円規模の中堅・中小企業(SMB)で約20%に達しているとしたうえで、業種別の展開状況を解説。岩上シニアアナリストは「製造業の海外展開が多いが、卸売業、流通・運輸など、他の業種でも盛んになっている」と、現状を説明した。

ノークリサーチの岩上由高シニアアナリスト

 一方で、海外向けビジネスを展開する際の障壁について、展開する意欲はもっているが実現や判断ができないSMBの4割強は、展開を阻む要因として「頼れる人材や企業が身近にない」ことを挙げていた。また、展開が不要と考えている企業は、4割強が「国内市場で十分」、3割強が「自社の商材が海外で受け入れられない」と考えていた。岩上シニアアナリストは、組立製造業は『日本国内で十分』という回答が最も少なく、海外展開に積極的であるが、その一方で『取引先が海外で展開しているので、自社で出る必要がない』と考える企業も存在している点に注意が必要だ。建設業は製造業に次いで『国内で十分』という率が低く、海外展開の必要性を意識しているが、その一方で4割強が『コストとリスクを比較するとメリットが少ない』と答えていた。法制度の違いなどが課題となっているようだ」という。

 この現状で、何が海外への展開を加速させる要因になるのか。「中国・インド・東南アジアの新興国の経済発展」と答えるSMBが最も多く、半数以上に達した。岩上シニアアナリストは「『国内で十分』と考える企業も、経済などの状況が変化し、市場の拡大が顕著になれば、意識が変わってくる可能性がある。SMBのなかでも資本力のある企業ほど、中国とインドへの展開が増えている」と、東アジアの経済発展次第で、進出企業が増えると分析している。

 では、海外展開に伴うITの利活用で、企業が相談や構築を依頼する相手はどこなのか。回答では、「国内の本社で意志決定を行い、展開先に通知する」が最も多かった。岩上シニアアナリストは「国内で使っているITベンダーを海外でも使うとは限らない」と、警鐘を鳴らした。実際に展開したあとは、進出先の自社人材に裁量を委ねる傾向がある。本社や現地展開の人材が販社やSIerを選択するときに重視しているのは、展開先にサポート拠点をもち、法制度や商習慣に精通していることを前提に、「海外顧客に実績が豊富であることが注目に値する。展開したあとの市場開拓などの支援もしてくれる販社・SIerを重視している」という。

中国・武漢の実状を語ったシスプロの丸山隆マネージャー

 続けて、中国・武漢の再開発プロジェクトの状況などについて、シスプロの丸山隆・国際事業部ソリューション推進課セクションマネージャーが話をした。同社は市内にBPOセンターなどの拠点を設け、市政府の「顧問企業」として、再開発地区への日本企業の誘致活動を支援している。その一つ、「光谷日本科技産業園」に進出する日本企業に対し、協力会社のITベンダーとIT人材の派遣などを行っていくことになっている。丸山マネージャーは「すでに、大手建設業会社などが進出を決めている」としながら、MIJSの会員企業にも協力を求めた。

シンガポールの現在を語ったカスタム・テクノロジーの和久井利哉取締役

 最後に、東南アジア・インドワーキンググループに関連して、カスタム・テクノロジーの和久井利哉取締役がASEANの事情を説明した。同社は提携先のCelestix Networks社経由で、シンガポールでビジネスを展開している。「シンガポールは、太平洋戦争の時は日本の植民地だったが、外交関係は良好で、最初にFTA(自由貿易協定)を結んだのも日本だった。“明るい北朝鮮”といわれ、人民行動党の事実上の一党独裁国だ。税制では、投資優遇策で外国資本と国内資本の差を設けていない。法人税率が17%に引き下げられている」とシンガポールの現在を語った。

 シンガポールは、世界第2位のネットワーク対応国として知られ、ITランキングも世界4位。ちなみに日本は17位だ。日本の銀座にあたる繁華街では、交通量を制限するために自動料金収受システムで課金するロードプライシングを行うなど、IT利用が進んでいる。和久井取締役は、シンガポールの日系企業のIT環境について、製造業や金融業など44社の調査では「41%にIT組織がなく、ITの統括責任がない。1社あたりのIT投資は、年間1000万円未満が48%と多い」と、ITベンダーが現地の日系企業とリレーションする際の障壁が多く、IT投資も少ない現状を説明した。(谷畑良胤)