日系ITベンダーが中国のユーザー企業向けに提供しているシステムはどんな状況にあるのか――。各社とも、中国の商慣習に合わせて案件を獲得しようと取り組んでおり、中国の現地企業に対して、価格面や構築期間などを含めて、あの手この手でシステムを提案している。そんななかで、現段階に限っていえば、中国の現地企業を相手にするというよりも、日系ユーザー企業が中国でのビジネス拡大に役立つシステムを提供しているケースが多いのが実態のようだ。そこで今回は、日系ITベンダーが日系ユーザー企業向けにシステムを構築した事例を紹介する。(取材・文/佐相彰彦)
【日系ユーザー企業のシステム事情】
兼務が多くシステム管理者が不足
ITベンダーの役割は業務最適化の支援
日系ユーザー企業が自らのシステムを改善する前の状況をいえば、予想以上にIT化が遅れている実態があった。とくに、中堅・中小規模のオフィスに多くみられる傾向だ。これは、中国で現地法人を設立し、ミニマムスタートから徐々に拡大していくステップを踏むこともあって、現地スタッフの数が少ないことに起因している。営業担当者もしくは幹部スタッフがシステム管理者を兼務するケースが多く、専属のシステム管理者を配置している例はきわめて少ない。在庫データや販売データなどを手書きの紙ベースで管理している企業も珍しくない。
こんな状況にあって、日系ITベンダーは、まずシステムありきの提案ではなく、企業規模や業務内容、システムに関するスタッフのスキルなどを把握し、日系ユーザー企業ごとに適するシステムを提案している。
また、現地法人の立ち上げにタイミングを合わせてシステムを完成させるケースも多く、システムのトラブルには細心の注意を払うことが要求される。さらに、これまでは企業規模が小さかったために本格的なシステムを導入していなかったものの、売上高の急拡大とともにシステムを革新するというケースも、成長著しい中国市場ではよくある例だ。こういったケースでは、成長ぶりを勘案しながら拡張できるシステムを提案することがポイントになる。
さまざまな導入事例があるが、総じていえるのは、ベンダーとユーザー企業が二人三脚でシステムを構築していくことが重要なポイントになっているということだ。
以下、五つのユニークな導入事例を取り上げて、成功の理由を探っていく。