エネルギー管理のツールを提供するシュナイダーエレクトリック(シュナイダー)で、パートナー向け営業を担当する市毛亜矢子さん。2012年7月に入社した同社で、女性の外勤営業としての草分け的存在となっている。市毛さんは、仕事と家庭の両立を重視しており、シュナイダーで活躍する女性社員のロールモデルになることが期待されている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
[語る人]
●profile..........市毛 亜矢子(いちげ あやこ)
大学卒業後、2004年、アウトソーシングサービスを提供する事業者に入社。営業に携わる。09年、有力システムインテグレータ(SIer)に転職し、データセンター(DC)サービスを主な商材として営業を担当する。12年7月、シュナイダーエレクトリックに入社。パートナー営業部のアカウントマネージャーとして、パートナー向けの提案活動に従事している。
●会社概要.......... UPS(無停電電源装置)や空調システム、PDU(電源タップ)といったエネルギー管理製品を展開する。本社はフランスで、日本では東京・港区にオフィスを置いている。
●所属..........パートナー営業本部
パートナー営業部
アカウントマネージャー
●営業実績.......... 前職のDCサービス営業で、すぐれた実績を上げ、数多くのセールス賞を受賞した。
●仕事.......... ソリューションプロバイダを中心とするパートナーに対して、小型UPSなどを提案している。前職でシステムインテグレータ(SIer)の営業を担当した経験を生かし、製品をユーザー企業に提案するSIerの立場を考えて、SIerをサポートする営業活動を心がけている。現在、7~8社のパートナーを担当している。
働き方は効率的に
20代の頃は、自分が女性であることをビジネスの面でほとんど意識しなかった。IT業界で活動する若手の営業パーソンの一人として、とにかく先を走っている人を追いかけたいと考えて、必死に動いた。一日も早く、ばりばり働く先輩たちにキャッチアップできるよう、仕事に夢中になって、周りの男性と同じような働きぶりを心がけてきた。
お客様にITの活用を提案し、その会社のビジネスを支援する営業職にやり甲斐を感じていた。仕事は忙しいけれど、とても楽しい。そんな充実した毎日で、自分の働き方を変えようとは、まったく思っていなかった。
ところが、30歳の誕生日を目の前にして、仕事に対する考えが変わり始めた。仮に結婚をして、子どもを産んだら、今の仕事のこなし方で本当にいいのか。私は、そのときに勤めていた会社での過酷な労働環境に疑問を抱くようになった。
当時は、データセンター(DC)サービスなどを提供する有力システムインテグレータで営業担当として働いた。プロジェクトが始まったら、毎日のように徹夜の仕事が続き、朝、会社に泊まった営業メンバーが社内に備えられたシャワー室に集まり、「今日も頑張りましょう」と励まし合うほどの多忙な日々を送っていた。土・日・祝日に出社することも珍しくなかった。
私は、仕事と家庭の両方に対して、どちらもちゃんと責任を果たしたいと思っている。しかし、当時の働き方では、仕事と家庭の両立はできそうにない。そう判断し、転職を決意した。シュナイダーの面接を受けたとき、人事担当の人から「当社は外勤の女性営業はまだ少ないが、積極的に増やしていく」と聞いた。外資系企業で自分を試してみたいという気持ちもあって、シュナイダーへの入社を決めた。
入社したのは、2012年の7月だった。実際に半年くらい働いてみて、残業しすぎないように上司が配慮してくれたり、女性として活躍できる場を得られたことを実感している。私は、転職をきっかけとして、ここ数か月の間で仕事のやり方を意識的に変えてきた。昔のような忙しさを避けるために、自分への期待値を少し下げて、決めた時間内に仕事が収まるように、効率的な働き方を心がけている。
考えてみれば、こうしたライフワークバランスは、女性とか男性とかにあまり関係がないと思う。今の会社には、子育てに携わりたいと考えて、仕事の量を減らしている男性社員もいる。私は、仕事と家庭を両立して、営業としてずっと働き続けたいと思っているからこそ、ライフワークバランスを重視している。