シュナイダーエレクトリックは、UPS(無停電電源装置)「Smart-UPS」シリーズの新製品を6年ぶりに投入した。東日本大震災を受けて、電力不足対策の意識が高まる国内のユーザー企業や販売会社の声を多く取り入れ、省エネ設計で効率4%向上を実現した製品だ。今夏に予想される全国各地での節電対策に向け販売を強化する狙いもある。家庭用からデータセンター利用まで幅広いUPSのラインアップを揃え、世界と国内でトップメーカーに君臨する同社営業本部の妻鹿行雄・営業統括本部長に、最近の国内でのUPS需要動向を聞いた。

<UPSメーカー特集 vol.1>【座談会】から読む

環境、省エネ、寿命に配慮

営業本部 営業統括本部長
妻鹿 行雄 氏
 同社は今夏の需要期を前に、「APC」ブランドで展開する「Smart-UPS」の新シリーズとして、オフィスや小規模データセンター(DC)向けのタワー型とラックマウント型の9機種を発売した。新製品の特長は、震災が大きく影響を及ぼした日本国内のユーザー企業や販売会社の声を多く反映している点にある。妻鹿・営業統括本部長によれば、震災後、顧客が求めるUPSを開発するため同社はこんな活動を展開したという。

 「震災の起きた日本の事情は世界とは異なる。今まであまりやっていなかったことだが、震災後、米本社の開発担当が来日し、徹底して国内の企業と販売会社を訪問して意見を聞いた」

 顧客がUPSを使って、より適正な事業継続計画(BCP)やディザスタリカバリ(DR、災害復旧)を実現するために、日本顧客に合った仕様を研究し、大規模な開発投資をしたという。ユーザー企業と販売会社の声で多かったのは、環境配慮、省エネ性能、バッテリ寿命の3点に関する要望だ。

 これを受けて新製品は、熱量を低減することで従来の効率93%から効率97%以上に引き上げ、エネルギーをモニタリングする仕組みを備えて消費電力削減を可能にした。また、従来製品で2.5年だったバッテリ寿命を4.5年に延ばし、環境負荷を低減する「グリーンモード」を搭載した。そのほか、カタカナ文字と数字を表示するLCD(液晶)ディスプレイを採用することによってエネルギー消費を見える化し、UPSの状態やバッテリ交換の推奨時期を表示するなどの機能を追加した。


UPSの用途拡大で需要も増加

 新製品の投入とあわせて、国内UPS市場の状況把握にも努めている。震災と前後して、ユーザーのUPS利用環境の変化について妻鹿・営業統括本部長は、こう分析する。

 「震災後の2011年4~5月は、余震や電力不足に備えるためにUPS需要が活発化した。その後は、買え控えがあって伸び悩んだが、当社全体として2010年に比べて2011年は大幅に成長した。最近の特徴としては、従来の使い方に加え、われわれが予想もつかない用途でUPSが使われ始めている。UPSの国内市場は、全体が膨らんでいる印象だ」

 妻鹿・営業統括本部長によれば、用途が拡大して需要が増えたのは、企業向けと家庭向けの両方だという。企業向けの一般オフィスでは、一例を挙げると、デスクトップPCにUPSを装備するやり方が普及した。震災後、一時的にはデスクトップPCからバッテリ電源を使えるノートPCへの移行が進んだ。だが、ノートPCは価格が高いこともあって、それよりも安価なUPSが選択されるようになった。また、特定の業務用途で、いままでにない利用方法も増えたという。

 「例えば、駐車場を運営する会社が、震災が起きた場合にガレージからクルマを出すための一時的な電源として使うとか、銀行が防犯シャッターを降ろすためにUPSを導入するケースがある。太陽光発電とUPSを併売する販売会社も登場し、これが受けている」

 現在、同社が新製品などで企業向けに訴求しようとしているのは、こうした用途に加えて、自社内にあるネットワーク機器での利用だ。「クラウドコンピューティングの進展で、企業のシステムが社外へ移設されている。しかし、クラウドサービスを使う際、自社内にあるルータやスイッチの電力供給が滞れば、サービスが使えなくなる」。サーバーやストレージへのUPS配置は一般的だが、ネットワーク機器への対応は遅れているとの判断からだ。

 さらに、UPSの成長をけん引したのは、企業向けだけではない。家庭でも、新たな用途にUPSが使われ始めたことにも起因している。「従来は、UPSは雷対策などに使われたが、震災後は、長期停電に備えて固定電話・携帯電話の充電や、震災後の避難路などを知るための情報獲得に必要なテレビのバッテリ電源として求めるユーザーが増えている」。

 同社は今夏に向けて、UPSの販売促進として以前実施したキャンペーンと同様の施策「UPS“+ONE”キャンペーン」を実施している。UPS購入者に電源対策などの関連製品をプレゼントし、新たな需要を喚起する計画だ。

(写真/津島隆雄)