UPS(無停電電源装置)などデータセンター(DC)向けのエネルギー管理ツールを提供するシュナイダーエレクトリック(セルジュ・ゴールデンベルグ社長)は、パートナー体制の強化に取り組んでいる。昨年3月に、営業サポートや技術トレーニングなどの支援策を用意する「APCチャネルパートナープログラム」を開始しておよそ1年。2013年は、プログラムの最上位カテゴリとなる「Elite Partner」の獲得を目指す。ハウジング需要にけん引されてDC市場が活性化するなか、エネルギー管理によって運用コストを削減するツールを商材として、マーケット開拓に意欲を示している。

シュナイダーエレクトリックのアジアパシフィック・ジャパン地域社長で、ITビジネスを統括するフィリップ・アルソノ氏 国内のDCアウトソーシング市場は、東日本大震災発生後のハウジング需要の増大が刺激となって順調に伸びている。調査会社のIDC Japanによれば、売上高ベースの市場規模は2012年の1兆1298億円から、2016年までにおよそ1兆5000億円に拡大することが見込まれている。
需要に対応すべく、DC事業者が設備の新設・増設に取り組んでいる状況にあって、サーバーやネットワーク機器といったIT製品だけではなく、DC内のエネルギー供給・使用を管理するインフラ製品もニーズが高まりつつある。停電の時にIT機器に一定の期間、電力を供給するUPSや省エネ型の空調システム、省スペース型ラックといったツールは、有望な商材として注目を集めている。
IDC Japanが2012年に実施したDC運営者への調査によると、回答企業の7割以上が、DC内の電源/空調整備の改善を課題としていることが明らかになった。電気料金が上がり、DCでいかにエネルギーを効率よく使用するのかが収益の向上に直結するようになっている。DCを運営する企業は、IT機器を省エネ機種に置き換えるのはもちろんのこと、物理インフラの効率性の向上を図ることも喫緊の課題になっている。
シュナイダーエレクトリックは、DC向けエネルギー管理ツールの需要拡大を見据えて、2012年3月に「APCチャネルパートナープログラム」を開始。販売体制づくりに取り組んできた。北海道石狩市で「石狩DC」を運営するさくらインターネットにモジュール型を納入するなど、チャネルの強化によって販売実績を伸ばしている。
同社はプログラム開始の1年目に、DCを強みとするパートナーの登録数を増やすことに力を入れてきた。これらの登録パートナーから高度な技術スキルやデモ設備を有する企業を選定し、有力パートナーに育てるのはこれからの課題だ。
アジアパシフィック・ジャパン地域社長で、ITビジネスを統括するフィリップ・アルソノ氏は、「2013年中に、最上位カテゴリーである『Elite Partner』を獲得する」ことを方針に掲げている。「Elite Partner」とは、技術・営業リソースに積極的に投資し、シュナイダー製品のショールームなどの設備を用意する販売会社を指す。シュナイダーエレクトリックは、本年中をめどに約10社の「Elite Partner」を募集し、要件に合致するパートナーには引き合い情報を提供するほか、営業担当を配置する。
「当社はグローバルベンダーなので、海外でDCを建設する日本の事業者に対して、現地でのサポートを提供する」(アルソノ氏)とアピールする。ハウジング事業者やクラウドサービス事業者のほか、DCをベースとして海外でのサービス展開に取り組んでいる通信キャリアも対象にしている。
有望市場であるDC。商機到来で競争が激しいDC向けIT機器だけでなく、シュナイダーの取り組みはインフラ製品の提供にも商機があることを教えてくれる。(ゼンフ ミシャ)