中国で歌手などのファンサイトを運営するLojiao(搂椒、本社・上海市)は、IIJグローバルソリューションズの上海現地法人、IIJ Global Solutions Chinaが展開するクラウドサービス「IIJ GIO CHINA」を導入した。サイト基盤をクラウド型で構築し、中国全土からすばやくファン情報にアクセスすることができる仕組みを実現している。向こう1年で100ほどのサイトを新たに開設するなど、「IIJ GIO CHINA」を活用して積極的に事業拡大に取り組む。
ユーザー企業:Lojiao
アーティストのファンサイトを運営。サイトを通じてビデオのダウンロードやグッズの購入を促進し、特典が得られるポイントをファンに還元するビジネスモデルを展開している。上海市に本社を置く。
サービス提供会社:IIJ Global Solutions China
サービス名:クラウドサービス「IIJ GIO CHINA」
【課題】安定稼働には基盤強化が必要
中国は経済が成長するにつれて、他国の大衆文化が人気を集めるようになってきた。北京や上海など都市部の若者を中心に、海外の歌手や俳優のファンが増えつつある。上海に本社を構えるLojiaoは、インターネットで海外の人気歌手の曲を聴いたり、グッズを購入したりすることができる仕組みとして、アーティストのファンサイトを運営している。サイトを訪れて、ダウンロードや購入を行ったユーザーにはポイントが還元され、ポイントが貯まれば、アーティストのサインが手に入るなどの特典が設けられている。
「通常はサイトへのアクセスが安定している。しかし、海外の歌手が中国でコンサートを開くなどの特別なイベントの際は、その歌手のサイトへのアクセスが急増してシステムがダウンすることもある」。LojiaoでIT担当を務めるサンディ・ホン氏は、トラフィック集中によるシステム障害を避けることを目指し、サイトの基盤を強化することを決めた。2012年の夏頃から、中国や米国のITベンダーを中心に、基盤をクラウド型で構築するIaaSサービスを検討し、複数の製品を試験的に利用してきたという。
そうしたなかで、中国や米国ではなく、日本本社のベンダーに着眼して導入を決めた背景には、タイミングのよさがあった。日本で法人向けクラウドサービス「IIJ GIO」を展開するインターネットイニシアティブ(IIJ)は、中国版である「IIJ GIO CHINA」を、今年1月の正式発売に先駆けて2012年後半にテストリリースし始めた。日本では多くのウェブコンテンツ事業者を顧客として獲得している実績を踏まえ、中国現地での販売パートナーを通じて、Lojiaoに「IIJ GIO CHINA」を提案した。とくに力を入れて訴求したのは、インターネットの「南北問題」を解決することができるという点だった。

日本の女性歌手、LiSAのファンサイトがユーザーから人気を集めている。「IIJ GIO CHINA」を活用し、遅延の少ないアクセスを実現
【導入と効果】全国ユーザーからの迅速アクセスを実現
インターネットの「南北問題」は、中国の二大通信キャリアであるチャイナテレコムとチャイナユニコム間のデータ通信に時間帯によって遅延が発生する現象をいう。相互接続回線がひっ迫し、例えばチャイナテレコムのユーザーがチャイナユニコムの回線を使っているサイトにアクセスしようとすると、海外経由の通信になって、通信の速度が遅くなる。
全国展開しているLojiaoは、通信キャリアを問わず、すべてのユーザーがすばやくファンサイトにアクセスできることを重視し、独自ゲートウェイの設置によって通信遅延を小さくする「IIJ GIO CHINA」を高く評価した。「南北問題」の解決ができると判断し、昨年末に導入を決定した。ホン氏は、「IIJは品質に厳しい日本で大手のオンラインゲーム事業者にもクラウドサービスを提供しているという実績があって、同社の技術力に信頼感をもった」と語る。
Lojiaoは「IIJ GIO CHINA」を活用し、ビジネスを大きく伸ばそうとしている。向こう1年の期間でファンサイトを100ほど新設して、アーティストが統合的にPR活動ができるプラットフォームとしての定着を目指す。サイトの数を増やすにあたっては、基盤を迅速に拡張することが求められる。「IIJ GIO CHINA」はクラウド型なので事業の成長に応じて柔軟に拡張できるとみて、その活用に期待を寄せている。「IIJには当社を長期的に支援してもらいたい」(ホン氏)と要望している。
Lojiaoは「IIJ GIO CHINA」の最初のユーザーだ。IIJ国際事業推進室の小川晋平シニアマネージャーは、「もともと、日本と欧米の企業をターゲットに据えていたが、Lojiaoに採用していただき、中国企業にも利用してもらえるという感触を得ている」と自信をみせる。(ゼンフ ミシャ)
3つのpoint
「南北問題」の解決で通信を高速化
日本でのIIJの実績
長期的にサポートする体制