BCN(奥田喜久男社長)は、2月8日、セミナー「SIerのためのビジネス講座Vol.4」を東京都内で開催した。今回のテーマは、「最新デジタルサイネージソリューションがもたらすビジネスチャンスを一挙紹介!」。最新ソリューションの概要、導入効果や市場動向を識者が解説したほか、パネルディスカッションで今後のデジタルサイネージ市場を展望した。各講師からは共通して、「デジタルサイネージの導入そのものが目的ではなく、コミュニケーションプランに基づいた提案が重要」とのアドバイスがなされた。SIerや関連製品販社関係者ら約50人が熱心に聴講した。(取材・文/本多和幸)
ユーザーにはSIerのサポートが不可欠
セミナーの冒頭、デジタルメディアコンサルタントの江口靖二氏が基調講演を行い、「2013年のデジタルサイネージ市場展望」というタイトルで持論を展開した。江口氏は、広告収益型のデジタルサイネージの成功モデルとして「JR東日本トレインチャンネル」を挙げつつも、「規模のメリットを最大限発揮した結果であり、他の事業者が真似をしても成功しない」と指摘。デジタルサイネージを単独で考えるのではなく「さまざまなメディア、端末を駆使してコミュニケーション設計を行ったうえで導入提案すべき」と強調した。
基調講演の後は、四つのセッションで最新の関連ソリューションを紹介した。デジタルサイネージ用ソフトウェア「Scala」を展開するSCALAの古市隆裕・システム・コンサルティング・マネージャーは、「Scala」の特徴を「コンテンツ制作から管理運用、データ分析まで幅広くカバーする。コミュニケーションプランさえできていれば、すぐに使ってもらえる」と説明。また、SIerにとってのビジネスチャンスについては、「社内コミュニケーションのツールとしてデジタルサイネージを利用するケースが増えている。ユーザー企業は技術をよく知らないことが多いので、SIerのサポートが不可欠」と述べた。

(写真左から)デジタルメディアコンサルタント 江口靖二氏、SCALA 古市隆裕氏 岡谷エレクトロニクスの高橋一夫・応用技術部ソフトウェア技術グループプロジェクトリーダーは、サーバー向けOS「Windows Server 2012」の概要と特徴を説明し、従来製品に比べてデジタルサイネージ活用のポテンシャルが高まったことを示唆した。
潜在的なニーズを掘り起こせ
デジタルサイネージソリューションの国内最大手であるピーディーシーは、システムビジネス部の玉井佑樹氏が、昨年11月に発売したクラウド型デジタルサイネージシステム「AFFICHER」を紹介した。「機器の設置作業が容易で、セットアップも自動で行う。すべての操作をインターネット経由で行えるので、人件費も含めて大幅にコストを削減することができる」と説明。さらに、豊富な実績を通して蓄積したノウハウを生かし、「コンサルティングから効果測定、マーケティングまで、すべての工程をワンストップサービスで提供する体制を整えている」と、自社の強みをアピールした。

(写真左から)岡谷エレクトロニクス 高橋一夫氏、ピーディーシー 玉井佑樹氏 マカフィーの曽我睦巳・営業開発部エンベデッドセキュリティーソリューションズアカウントマネージャーは、デジタルサイネージのセキュリティ対策を解説した。堅牢なシステムであることが求められるデジタルサイネージには、「従来のブラックリスト型セキュリティ対策はなじまず、ホワイトリスト型対策が有効」として、導入事例などを紹介した。
セッションの終了後には、ダイワボウ情報システムの大関慶明・東日本営業本部首都圏営業統括推進グループ係長と、岡谷エレクトロニクスの橋本和典・第一営業本部カスタムソリューション推進部ゼネラル・マネージャーが、デジタルサイネージソリューションの販売戦略をプレゼンした。両社はこの分野で提携しており、3月以降、ダイワボウ情報システムの会員専用受発注システム「iDATEN(韋駄天)」に岡谷エレクトロニクスの取り扱い製品も掲載するなど、協業関係を強化することを明らかにした。

(写真左から)マカフィー 曽我睦巳氏、ダイワボウ情報システム 大関慶明氏 パネルディスカッションには、古市マネージャー、高橋プロジェクトリーダー、玉井氏がパネリストとして参加し、谷畑良胤・『週刊BCN』編集委員がモデレータを務めた。ディスカッションでは、流通業界でデジタルサイネージのニーズが大きくなりつつある状況にあるという意見が出されたほか、未開拓分野へのアプローチについて、「潜在的なニーズをユーザーに気づかせるきっかけをつくるのが、メーカー、ディストリビュータ、SIerの役割」との指摘も聞かれた。
セミナーの最後は、岡谷エレクトロニクスの親会社である岡谷鋼機の中村慎一・東京本店エレクトロニクス部横浜分室スタッフリーダーが、デジタルサイネージソリューションを拡販するうえでの展望や市場拡大への期待を語り、全プログラムを締めくくった。

(写真左から)岡谷エレクトロニクス 橋本和典氏、岡谷鋼機 中村慎一氏